日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR05] 第四紀:ヒトと環境系の時系列ダイナミクス

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 102 (1F)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、池原 研(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、兵頭 政幸(神戸大学 内海域環境教育研究センター)、座長:小荒井 衛(茨城大学)、納谷 友規(産業技術総合研究所)

13:45 〜 14:00

[HQR05-07] 宗像市沖ノ島の地形の特徴

*黒木 貴一1 (1.福岡教育大学教育学部)

キーワード:沖ノ島、地図、地形、地すべり

宗像市は2015年から現在市史の編纂を進めている。まもなく「うみ・やま・かわ」と題する自然編が出版予定である。これまで自然編作成の中で,沖ノ島と宗像市の周辺海底の地形に関する様々な地図を作成し,その地形及び分布の特徴を明らかにした。
「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群は,2017年7月に世界遺産に登録された。沖ノ島は,最高標高が約240m,面積が約96万m2の小島で,九州本島から北西約70kmの位置にある。この島は切り立った断崖と緩斜面で構成され,平野は大変少ない。また島の南西部は頁岩,北西部は石英斑岩,南東部は崖錐堆積物で構成されており,独特の地形分布がある。そこに歴史学的資料が多数発見され調査された。その南側の緩斜面には,4世紀から9世紀までの,航海安全を祈るための貴重な奉納品が大量に残されており,また神聖な場所,宗像大社の沖津宮が鎮座する。なお島で見聞きしたことは他言せず,島のものは持ち出さないという禁忌もある。
各種地理情報のGIS解析から,沖ノ島の地上と海底の地図を作成し,地形の特徴を検討した。さらに現地で地形及び地質調査を行った。地理情報として,国土地理院の基盤地図情報,海上保安庁発行の等深線データ,宗像市所有のレーザープロファイラーデータを使用した。基本的な標高分布図,傾斜量図,陰影図,立体地形図を作成した。標高分布図で見ると60-80mと40-60mの中間的な標高帯の面積が広い。傾斜量図で見ると30-40度の中間的な傾斜帯の面積が最も広い。さらに基礎的な地図の判読と現地調査から地形区分図を作成した。地形は,頂稜,開析谷,急崖,崩落堆,崖錐,海岸,人工改変地に区分された。特に南西部では,地すべりの存在を示す急崖と崩落堆の分布が特徴的である。また地表には主に東西性の走向を持つ線状模様が3列判読できた。立体地形図などから,沖ノ島本体は海底から約340mの高さを持つことが読み取れる。沖ノ島南方の海底地形は,西側は浅い平坦地で,東側は東に傾斜する凹地である。
沖ノ島では,今後成因を解明すべきその他の地形的な特徴も確認された。地上では石英斑岩の北向きの傾斜,中腹に散在する巨大な石英斑岩塊,海面よりかなり高い位置にある円礫層,海底では多くの崩壊地形である。今回の発表では,立ち入りが制限された沖ノ島に関し,GISによる地図の解析から明らかにされた各地形の特徴を紹介する。