[HQR05-P05] 郡山盆地の3本のオールコアの層序対比と浅部地下地質構造解析
キーワード:郡山盆地、オールコア、地下地質層序、テフラ
1.はじめに
産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所では,郡山盆地において地中熱利用促進のための地中熱ポテンシャル評価研究の一環として,盆地浅部(深度100m程度)の地下地質調査を行っている.これまでに郡山盆地中央部において掘削したオールコア(GS-KR2015-1,37°24′4.9″N,140°20′1.6″E,+251.60m,深度100m)の層序について報告した(石原,2018).また,郡山盆地北部では笠原ほか(2017)によるオールコア(KR-11-2,37°25′43.7″N,140°22′28.6″E,+248.60m,深度100.33m)の層序が報告されている.本発表では,2016年に郡山盆地南部で掘削したオールコア(GS-KRC-1,37°22′10.0″N,140°19′55.5″E,+249.40m,深度80m)の層序について報告するとともに,郡山盆地の深度100m程度までの地下地質構造について考察する.
2.GS-KRC-1コア
岩相:深度29mまでは,シルト~砂質シルト層を主体とし,砂の薄層が所々に挟在する.深度約3-8m,13.5-14m,18-24mは径10-30mmの中礫からなる砂礫層である.深度27.0-27.4mには,下部の粗砂サイズから上部のシルトサイズへ上方細粒化する軽石質火山灰層が挟まる.29m以深は砂礫層を主体とし,深度約52-65mにはシルト質~砂質の火砕流堆積物が見られる.
年代測定結果:14C年代測定は株式会社加速器分析研究所に依頼した.深度1.78mおよび2.12mの砂質シルトから採取した木片は,いずれも約50,000 cal yBPの値を示し,測定限界を超えている可能性もある.FT年代測定は株式会社京都フィッショントラックに依頼し,深度55-59mの火砕流堆積物から3.4±0.4Maの値を得た.
3. 考察
GS-KRC-1コアの深度29mまでのシルト主体の地層は,岩相の特徴からGS-KR2015-1コアの深度1.5-22.6mおよびKR-11-1コアの深度0.5-46.3mの郡山層上部に対比される.深度約52-65mの火砕流堆積物は,GS-KR2015-1コアの深度41.9-49.0mに見られる火砕流堆積物(FT年代値: 3.2±1.3Ma)と岩相の特徴やFT年代が調和的であることから,同一の火砕流堆積物である可能性が高い.深度29-52mの礫層については,年代値が得られていないため詳細は不明であるが,郡山層下部または白河層(鈴木ほか,1967,笠原ほか,2017)の可能性が考えられる.テフラの分析および同定結果については,発表時に報告予定である.
石原(2018)は,GS-KR2015-1コアとKR-11-1コアの対比に基づき,郡山層および勝方火砕流(Sr-Kc-U8; Suzuki et al., 2017,白河層の一部)の堆積直前の地形が起伏に富む丘陵状の地形であった可能性を指摘した.GS-KRC-1とGS-KR2015-1に見られる約3Maの火砕流堆積物についても,両者が同一のものとするとその下面高度には10m以上の差があり,堆積直前に段丘あるいは丘陵状の地形が存在していたことが示唆される.
3本のコアの層序を基に既存のボーリング柱状図資料の地層を解釈し,郡山盆地の地下地質断面図を複数作成した.南北方向の断面図では,郡山層と白河層または鮮新統の地層との境界面が起伏に富む傾向が見られた.一方,東西方向の断面図では,境界面の起伏は少なく,緩やかに東へ傾く傾向が認められた.したがって,郡山層堆積直前の郡山盆地では,現在と同様に東流する水系が発達し,東西にのびる尾根と谷が発達していた可能性が考えられる.
文献:石原 2018.日本地理学会発表要旨集, 94, 156.笠原ほか2017. 地学雑誌 126,665-684. Suzuki et al., 2017. Quaternary International, 456, 195-209. 鈴木ほか 1967.福島大学理科報告, 17, 49-67.
産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所では,郡山盆地において地中熱利用促進のための地中熱ポテンシャル評価研究の一環として,盆地浅部(深度100m程度)の地下地質調査を行っている.これまでに郡山盆地中央部において掘削したオールコア(GS-KR2015-1,37°24′4.9″N,140°20′1.6″E,+251.60m,深度100m)の層序について報告した(石原,2018).また,郡山盆地北部では笠原ほか(2017)によるオールコア(KR-11-2,37°25′43.7″N,140°22′28.6″E,+248.60m,深度100.33m)の層序が報告されている.本発表では,2016年に郡山盆地南部で掘削したオールコア(GS-KRC-1,37°22′10.0″N,140°19′55.5″E,+249.40m,深度80m)の層序について報告するとともに,郡山盆地の深度100m程度までの地下地質構造について考察する.
2.GS-KRC-1コア
岩相:深度29mまでは,シルト~砂質シルト層を主体とし,砂の薄層が所々に挟在する.深度約3-8m,13.5-14m,18-24mは径10-30mmの中礫からなる砂礫層である.深度27.0-27.4mには,下部の粗砂サイズから上部のシルトサイズへ上方細粒化する軽石質火山灰層が挟まる.29m以深は砂礫層を主体とし,深度約52-65mにはシルト質~砂質の火砕流堆積物が見られる.
年代測定結果:14C年代測定は株式会社加速器分析研究所に依頼した.深度1.78mおよび2.12mの砂質シルトから採取した木片は,いずれも約50,000 cal yBPの値を示し,測定限界を超えている可能性もある.FT年代測定は株式会社京都フィッショントラックに依頼し,深度55-59mの火砕流堆積物から3.4±0.4Maの値を得た.
3. 考察
GS-KRC-1コアの深度29mまでのシルト主体の地層は,岩相の特徴からGS-KR2015-1コアの深度1.5-22.6mおよびKR-11-1コアの深度0.5-46.3mの郡山層上部に対比される.深度約52-65mの火砕流堆積物は,GS-KR2015-1コアの深度41.9-49.0mに見られる火砕流堆積物(FT年代値: 3.2±1.3Ma)と岩相の特徴やFT年代が調和的であることから,同一の火砕流堆積物である可能性が高い.深度29-52mの礫層については,年代値が得られていないため詳細は不明であるが,郡山層下部または白河層(鈴木ほか,1967,笠原ほか,2017)の可能性が考えられる.テフラの分析および同定結果については,発表時に報告予定である.
石原(2018)は,GS-KR2015-1コアとKR-11-1コアの対比に基づき,郡山層および勝方火砕流(Sr-Kc-U8; Suzuki et al., 2017,白河層の一部)の堆積直前の地形が起伏に富む丘陵状の地形であった可能性を指摘した.GS-KRC-1とGS-KR2015-1に見られる約3Maの火砕流堆積物についても,両者が同一のものとするとその下面高度には10m以上の差があり,堆積直前に段丘あるいは丘陵状の地形が存在していたことが示唆される.
3本のコアの層序を基に既存のボーリング柱状図資料の地層を解釈し,郡山盆地の地下地質断面図を複数作成した.南北方向の断面図では,郡山層と白河層または鮮新統の地層との境界面が起伏に富む傾向が見られた.一方,東西方向の断面図では,境界面の起伏は少なく,緩やかに東へ傾く傾向が認められた.したがって,郡山層堆積直前の郡山盆地では,現在と同様に東流する水系が発達し,東西にのびる尾根と谷が発達していた可能性が考えられる.
文献:石原 2018.日本地理学会発表要旨集, 94, 156.笠原ほか2017. 地学雑誌 126,665-684. Suzuki et al., 2017. Quaternary International, 456, 195-209. 鈴木ほか 1967.福島大学理科報告, 17, 49-67.