日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-RE 応用地質学・資源エネルギー利用

[H-RE16] 資源地質学

2019年5月29日(水) 13:45 〜 15:15 106 (1F)

コンビーナ:大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、荒岡 大輔(産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、高橋 亮平(秋田大学大学院国際資源学研究科)、野崎 達生(海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)、座長:野崎 達生(海洋研究開発機構)、高橋 亮平(秋田大学国際資源学部)

15:00 〜 15:15

[HRE16-10] 風化型希土類鉱床の特徴と成因

★招待講演

*実松 健造1 (1.国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 鉱物資源研究グループ)

キーワード:希土類、風化、鉱床、資源、吸着

世界の希土類鉱床はカーボナタイト型、アルカリ岩関連型、漂砂型、イオン吸着型に分けられる。マントルや地殻中では微量元素である希土類が経済的に可採可能な品位にまで地質学的に濃縮するには、アルカリ岩質マグマの形成(カーボナタイトやアルカリ岩関連の鉱床として確認される)、風化の片方または両方の過程が必要である。本発表では後者の風化型である風化カーボナタイト鉱床、漂砂鉱床、イオン吸着型鉱床の特徴と成因をレビューする。

最も希土類品位が高いのは風化カーボナタイト鉱床である。もともと希土類品位が高い(>1%程度)カーボナタイトの炭酸塩鉱物が化学風化で溶解するものの、希土類は残留するために濃縮される。主要な希土類鉱物はモナズ石を含めた、初生および二次リン酸塩鉱物である。原岩がカーボナタイトであるため、軽希土類が多く重希土類に乏しく、Th含有量も比較的高い。未風化のカーボナタイトに比べて希土類鉱物は細粒であり、これが鉱山開発の際に希土類の回収率に影響する。

漂砂鉱床は火成岩や変成岩などが風化・浸食を被ることにより重鉱物が沖積層や海砂中に濃集したものである。有用鉱物はチタン鉱物(チタン鉄鉱、ルチル)、ジルコン、スズ石などであり、希土類に富む鉱床ではモナズ石や少量のゼノタイムが産出する。鉱石の希土類品位は低いが、砂や礫から構成されるために採鉱や選鉱が比較的容易であり、1965年あたりまでは世界の主要な希土類鉱床であった。モナズ石が多いため、軽希土類が多く重希土類に乏しく、Th含有量も比較的高い。ジルコンは少量の重希土類を含むが、希土類資源としての利用はされない。

イオン吸着型鉱床は前述した2種類の風化残留鉱床とは異なり、大部分の希土類が鉱物の結晶構造ではなく、粘土などの表面に静電気的に吸着して存在しており、イオン交換によって鉱石中の希土類が回収される。原岩は花崗岩であることが多く、この風化岩が鉱石(イオン吸着鉱)である。鉱床は一般に低品位であるが、軽希土類に富むものから重希土類に富むものまで様々である。原岩花崗岩には希土類フッ素炭酸塩(バストネス石、シンキス石など)や希土類含有珪酸塩(褐レン石、チタン石)といった比較的風化に弱い鉱物が多く、これらの軽希土類/重希土類比が、鉱石のそれに影響する。原岩花崗岩がリン酸塩鉱物(モナズ石やリン灰石)に富むと、鉱石中では風化耐性のあるリン酸塩鉱物中に希土類が含まれるためにイオン交換性の希土類が少なくなる。希土類を吸着しているであろう粘土鉱物としてカオリナイト、ハロイサイト、イライト、バーミキュライトなどが確認される。鉱石中のTh含有量は低く、粘土表面にもほとんど吸着されないため、他の希土類鉱床と比べてThに少ない特徴がある。