日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT21] 石造文化財に応用可能な非破壊分析

2019年5月29日(水) 15:30 〜 17:00 101 (1F)

コンビーナ:小口 千明(埼玉大学大学院理工学研究科)、Celine Elise Thomachot-Schneider(Groupe d'etude des environnements naturels, anthropiques et archeologiques - Universite de Reims-Champagne-Ardenne (France))、宋 苑瑞(早稲田大学)、Miguel Gomez-Heras(Universidad Autonoma de Madrid)、座長:宋 苑瑞小口 千明

16:15 〜 16:30

[HTT21-04] 高知県沿岸部の海底石造物の起源推定のためのポータブルXRFの活用

★招待講演

*谷川 亘1浦本 豪一郎2村山 雅史2濱田 洋平1山本 裕二2多田井 修3 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所、2.高知大学 海洋コア総合研究センター、3.マリン・ワーク・ジャパン)

キーワード:主成分分析、起源、ポータブルXRF、堆積岩、南海地震

高知県土佐清水市爪白海岸海底には人為的に加工されたと考えられる長さ1mにもわたる巨大な石柱が存在する(2016年に28体確認)。この地域ではこれまでに南海地震による津波災害と台風による風水害が多発しているため、海底の石柱群は津波や土石流等による陸上からの運搬、もしくは海底沈降による可能性がある。そこで本研究では、爪白海底石柱群の起源を明らかにするために、石柱群および近隣に露出している岩石(堆積岩:三崎層群、来栖野層)、採石場の岩石、石造物を対象に化学分析と岩石物性測定を行った。化学分析はポータブルXRF(pXRF)を用いた全岩化学組成分析と粉末X線による鉱物構成比分析を行い、岩石物性測定は間隙率と密度の測定を実施した。

ポータブルXRFの結果、12種類の元素濃度(Mg、Si、S、K、Ca、Ti、Mn、Fe、Rb、Sr、Zr、Pd)に対して明確に判読できた。そこで12種類の元素濃度を用いて主成分分析を実施した。すべての種類の堆積岩(砂岩、シルト岩、頁岩)について主成分分析を実施した結果、第一主成分により砂岩と頁岩が明瞭に区分でき、Mg、Fe、Tiの分散が強く反映されていることがわかった。さらに、砂岩のみを抽出して主成分分析を実施した結果、個々の試料の特徴がより明確になった。海底の石柱は三崎層群竜串層(海岸に露出した試料・採石場の試料)、および爪白集落の建屋の基礎と同じ特徴を示した(Zrの寄与率が高い)。一方、間隙率、固体密度、および構成鉱物比についてもこの3種類の試料は類似性が認められた。
以上の結果から、海底の石柱群は三崎層群竜串層により制作された岩石で過去に爪白地区で基礎や石段として利用されたものと結論づけられる。