日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT22] 浅部物理探査が目指す新しい展開

2019年5月28日(火) 09:00 〜 10:30 301B (3F)

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、井上 敬資(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、座長:横田 俊之井上 敬資

10:00 〜 10:15

[HTT22-05] 指向性ボアホールレーダによる水平孔での岩盤内3次元割れ目分布調査

*升元 一彦1松下 智昭2白鷺 卓1植木 隆3唐澤 信輔3牧野 大樹3和田 一成4 (1.鹿島建設株式会社 技術研究所、2.鹿島建設株式会社 中部支店、3.松永ジオサーベイ株式会社、4.三井金属資源開発株式会社)

キーワード:ボアホールレーダ、水平ボーリング、割れ目分布

山岳トンネルにおいて遭遇する施工中の切羽崩壊等の地質トラブルを回避するためには、事前に切羽前方の割れ目に関する情報を取得しておくことが重要である。そのための調査手法として、先進水平ボーリングが広く利用されているが、コストや工期の面から単一孔での調査になり、割れ目の広がりや分布を評価するのは困難であった。筆者らは単一孔であっても割れ目の位置だけでなく、その3次元的分布を評価可能な指向性ボアホールレーダを先進水平ボーリングへ適用することによる切羽前方探査手法の開発を進めている。本研究では、水平孔での探査手法の検討と現場試験を実施したので、その結果を報告する。
指向性ボアホールレーダの特長は、複数本の受信アンテナ素子が円形アレー状に配置されているため、素子間の反射波の到達時間差から到来方向を推定することができ、さらに、送受信アンテナ間の間隔を一定のまま深度方向に微小に移動させて得た2深度の反射波の平均到達時間から、探査対象の3次元位置を推定することができることである。
レーダを水平孔に適用する場合、孔崩れ防止策が大きな課題となる。この際、高周波電磁波による計測を行うため、非鋼製材の保孔管が必要になる。そこで、トンネル補助工法の一つFRP Injection Tube工法(以下,FIT工法)で使われているガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製のFIT管を保孔管として適用することにした。一方で、構造上FIT管同士を繋ぐスリーブ(L=0.2m)は鋼製材となるため、探査結果への影響が懸念された。そこで、スリーブがレーダ探査へ与える影響を確認するため、地表面下約1mのガス管(φ85mm)を探査ターゲットとした基礎試験を実施した。この結果、FIT管ありの場合でも、検出した反射点の位置はほぼガス管に一致した。スリーブは探査結果にほとんど影響を与えないことから、FIT管を保孔管として利用できることが確認できた。
次に、花崗岩主体のトンネル側壁に水平に削孔したボーリング孔において、岩盤割れ目を探査ターゲットとした現場試験を実施した。最初にボアホールカメラで孔内を撮影し、次に水平ボーリングをFIT管で保孔し、その中に指向性ボアホールレーダを挿入し、孔口から深度4m~18m範囲を0.1m間隔でデータ収録した。ボアホールカメラの孔内画像から破砕帯5箇所、開口割れ目24本を確認した。また、波形データからは計8個の反射面からの反射波を抽出し、各反射波の到達時間を解析して、反射面の走向傾斜とボーリング孔との交差深度を算出した。両者の比較から、各反射面の走向傾斜はボアホールカメラで得られた破砕帯や開口割れ目の走向傾斜とほぼ一致した。一方、ボアホールカメラで捉えられた破砕帯や開口割れ目の内いくつかは指向性ボアホールレーダの反射面として抽出されておらず、このことは孔内画像として捉えられていても孔壁から奥行き方向へ連続性が乏しい割れ目があることを示している。指向性ボアホールレーダを用いることで、比較的連続性の大きい割れ目の3次元分布が把握できると考えられる。