日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT24] 環境リモートセンシング

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)、近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長谷川 均(国士舘大学)、石内 鉄平(宮城大学)

[HTT24-P03] GPS観測データに基づく遊牧と定住化による草原植生への影響評価

*額尓 徳尼1王 勤学1岡寺 智大1Ochirbat Batkhishig2 (1.国立研究開発法人 国立環境研究所、2.モンゴル科学院 地理研究所)

キーワード:GPS、遊牧、定住化

モンゴル高原における草原生態系は、長く牧畜産業を営んできた。しかし、国境を挟んで、土地利用の制度が異なり、中国の内モンゴル自治区とモンゴル国の草原生態系における牧畜の管理法が大きく異なってきた。内モンゴル自治区においては、1978年以降市場経済が進行し、「草原法」における草地請負制度の導入により、定住化が進んできた。一方で、モンゴル国も1990年以来の市場経済の導入に伴い、家畜頭数が大きく増加し、従来の遊牧制度が変化しつつある。このような異なる牧草地の利用法が草原生態系の持続利用にどのような影響があるかを定量的に評価する必要がある。

本研究では、まず定住化が進んだ中国内モンゴル自治区と従来の遊牧制度下であるモンゴル国での家畜の採食活動の相違を示すために、アクティブセンサー、温度センサー、GPS記録を同時に記録できる最新のGPS装置をそれぞれ2サイトずつ約一年間の20分単位での高時間分解能の観測データを取得した。また、衛星データに基づく草原の植生変動や土地利用変化を解析し、遊牧と定住化による草原植生への影響評価を行った。その結果、まず遊牧であるモンゴル国での家畜所有頭数1100頭の農家のヒツジとヤギの採食範囲が年間約30km2超えたことに対して、内モンゴル自治区のオルドス市とシリンゴル盟の300頭ずつ所有する定住農家の家畜の採食範囲より約30倍も大きく、それによる草地への採食頻度が大きく異なることが分かった(図-1)。また、定住地では井戸周辺の年間アクセス頻度が大きく。それに対して、遊牧地では夏は河川沿いに宿営し、冬は山地沿いに宿営し、秋と春営地は短く宿営していることが示された。さらに、長期の衛星植生指数データの解析から草原植生の長期トレンドの変化が見られ、遊牧と定住化による草原植生への異なる影響が示唆された。