日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG41] 福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態

2019年5月26日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:高橋 嘉夫(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、北 和之(茨城大学理学部)、恩田 裕一(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、津旨 大輔(一般財団法人 電力中央研究所)

[MAG41-P03] 樹冠遮断プロセスが林内雨中の放射性セシウム及び溶存物質濃度に与える影響

*篠塚 友輝1加藤 弘亮2赤岩 哲1恩田 裕一2 (1.筑波大学生命環境学群地球学類、2.筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)

キーワード:樹冠遮断プロセス、放射性セシウム、樹冠通過雨、モニタリング

本研究では、樹冠遮断プロセスが樹冠下の雨量や溶存物質の濃度特性に及ぼす影響を明らかにするため、福島県浪江町のスギ林を調査対象森林として、林外雨及び林内雨の雨量と雨水に含まれるセシウム137濃度及び各種溶存イオン濃度を測定した。また、樹冠通過雨の採取地点の直上の樹冠構造を測量することにより、樹冠下での雨量及び溶存イオンの空間偏在性の発生要因について考察を行った。調査期間は、2018年6月25日から11月5日の約4か月間とした。その結果、樹冠通過雨量は樹冠開空度が高い地点で多くなる傾向が認められた。一方、樹冠通過雨に含まれるセシウム137は、雨量が多い地点ほど濃度が低くなる傾向が確認された。そのため、雨水にともなって樹冠から林床へのセシウム137移行フラックスは、雨量が多い地点で必ずしも移行量が多くなるわけではないことが分かった。樹冠通過雨に含まれるセシウム137の存在形態についてみると、樹冠通過雨量の増加とともに懸濁態のセシウム137の割合が小さくなる傾向が認められた。しかし、イベント降水量が大きい台風時には、樹冠通過雨量に関わらず懸濁態セシウム137濃度が高くなることが確認された。一方、溶存態セシウム137濃度及びMg2+、Ca2+、K+の溶存イオン濃度は、樹冠開空度が大きい地点で低くなる傾向が認められた。以上の結果から、降雨特性や樹冠構造の違いが樹体から雨水への放射性セシウム及び溶存物質の溶出フラックスに及ぼす影響が示唆された。なお、調査期間中 (6月25日から9月13日)の樹冠から林床への樹冠通過雨にともなうセシウム137移行量は初期沈着量の0.25%であった。