[MAG41-P08] 森林流域における放射性セシウム濃度の季節変化とその要因
★招待講演
キーワード:放射性セシウム、動態、沢水、森林流域
東京電力福島第一原子力発電所の事故によって放射性セシウム(Cs)を含む大量の放射性物質が大気に放出され、陸域にも沈着した。福島県の面積の約70%が森林で覆われており、除染が行われていない森林には多くの放射性Csが未だ残存している。そのため、除染が行われていない森林を水源とする沢水中の放射性Csの挙動や流出プロセスを明らかにすることは、沢水や河川水を飲料用水・農業用水などとして利用する際に必要となる。本研究では、森林流域から河川への放射性Csの影響を解明するために、2017年12月から福島県双葉郡浪江町を流下する猿田川と猿田川が流入する高瀬川において放射性Cs濃度から流出フラックスのモニタリングを行い、以下の知見が得られた。
1) 高瀬川及び猿田川の溶存態137Cs濃度範囲はそれぞれ10.3 - 37.2 mBq L-1及び 44.3 - 322.9 mBq L-1であった。この濃度差の主な要因は、集水域の137Cs沈着量の違いによるものと考えられる。また、夏季には溶存態137Cs濃度が高いなどの季節変化が確認された。高瀬川と猿田川上流では溶存態137Cs濃度と水温に正の関係性が認められたことから夏季の溶存態放射性Cs濃度増加の主な要因として、降水と河川水量の増加及び気温や水温の上昇による近傍エリアのリター層からの溶出が考えられる。
2) 溶存態137Csフラックスを算出した結果、猿田川では支流の流入が溶存態137Csフラックスに大きく影響を与えていることが推測された。また、流下の過程で通過する白砂子第一ため池で採取された堆積物から抽出した間隙水はため池水に比べて3 - 10倍ほど高い値を示した。フィックの法則を用いてフラックスの計算を行った結果、堆積物表層から直上水へ逸出する137Csは支流から供給される溶存態137Csフラックスに相当することから、溶存態放射性Cs収支を考える上で堆積物からの溶出と間隙水の逸出も無視できないことが推察された。しかしながら、高瀬川の溶存態137Csフラックスに対する猿田川の寄与は約1割であったことから、猿田川から高瀬川への溶存態放射性Cs負荷は小さいことが示唆された。
本研究の成果は福島県放射線医学研究開発事業補助金の一部である。
1) 高瀬川及び猿田川の溶存態137Cs濃度範囲はそれぞれ10.3 - 37.2 mBq L-1及び 44.3 - 322.9 mBq L-1であった。この濃度差の主な要因は、集水域の137Cs沈着量の違いによるものと考えられる。また、夏季には溶存態137Cs濃度が高いなどの季節変化が確認された。高瀬川と猿田川上流では溶存態137Cs濃度と水温に正の関係性が認められたことから夏季の溶存態放射性Cs濃度増加の主な要因として、降水と河川水量の増加及び気温や水温の上昇による近傍エリアのリター層からの溶出が考えられる。
2) 溶存態137Csフラックスを算出した結果、猿田川では支流の流入が溶存態137Csフラックスに大きく影響を与えていることが推測された。また、流下の過程で通過する白砂子第一ため池で採取された堆積物から抽出した間隙水はため池水に比べて3 - 10倍ほど高い値を示した。フィックの法則を用いてフラックスの計算を行った結果、堆積物表層から直上水へ逸出する137Csは支流から供給される溶存態137Csフラックスに相当することから、溶存態放射性Cs収支を考える上で堆積物からの溶出と間隙水の逸出も無視できないことが推察された。しかしながら、高瀬川の溶存態137Csフラックスに対する猿田川の寄与は約1割であったことから、猿田川から高瀬川への溶存態放射性Cs負荷は小さいことが示唆された。
本研究の成果は福島県放射線医学研究開発事業補助金の一部である。