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[MGI34-02] 酸化的な遠洋性堆積物中に存在する大量の微小マンガン粒について
キーワード:微小マンガン粒、酸化的堆積物、IODP第329次航海
マンガンは地殻に存在する金属元素の中で鉄、チタンに次いで存在量が多く、また、酸化還元状態のような化学的な環境変化に反応して希少金属を伴って沈殿物を形成または分解するため、環境中での金属元素の挙動を理解する上で、重要な元素として注目されてきた。深海底ではマンガン団塊やコバルトリッチクラストのような球状ないし板状の金属酸化物として広く存在し、近年はその成因について調査研究が進められている。ただし、鉄マンガン酸化物の生成が大規模に生じていると考えられる広大な外洋環流域海底下の酸化的な地層環境内で、どのように鉄マンガン酸化物が存在するか、その実態は分かっていなかった。
本研究は、統合国際深海掘削計画第329次航海で得られた南太平洋環流域の酸化的な海底堆積物 [1] の微細構造を詳しく調べた結果、直径数ミクロンの鉄マンガン酸化物微粒子(以下「微小マンガン粒」)が、堆積物1ccあたり1億~10億個存在することを発見した [2]。微小マンガン粒は、外洋域の酸素に富む堆積物にのみ見つかり、外洋地層全体での存在量を計算した結果、1028~1029個の微小マンガン粒が海底下に存在することが分かった。さらに、比重分画と鉱物の光学的性質から、こうした微粒子を堆積物から分離する技術を確立した。その上で主要・微量元素の組成を分析した結果、微小マンガン粒は海水中で形成されたことが示唆され、鉄やマンガン等の主要金属元素だけでなく、レアアースのような有用希少金属を多く含むことが分かった。特にマンガンについては、地層中に含まれるマンガンの30~60%、重さにして1.28~7.62 兆トンのマンガンに相当することが明らかとなった。これは、海底表層のマンガン団塊やコバルトリッチクラストに含まれるマンガン総量の100~1000倍に相当し、膨大なマンガンが微粒子状の形で海底下に埋もれていることを示している。以上から、これまで存在すら知られていなかった金属酸化物の微粒子が、海洋での金属元素循環や物質保持メカニズムを理解する上で重要な役割を果たすことが明らかなった。また、本研究で確立した環境試料から特定の微細粒子を精密かつ高速に分離・回収する技術は、今後、微粒子解析の基礎技術として、様々な応用展開が期待される。
本研究は、統合国際深海掘削計画第329次航海で得られた南太平洋環流域の酸化的な海底堆積物 [1] の微細構造を詳しく調べた結果、直径数ミクロンの鉄マンガン酸化物微粒子(以下「微小マンガン粒」)が、堆積物1ccあたり1億~10億個存在することを発見した [2]。微小マンガン粒は、外洋域の酸素に富む堆積物にのみ見つかり、外洋地層全体での存在量を計算した結果、1028~1029個の微小マンガン粒が海底下に存在することが分かった。さらに、比重分画と鉱物の光学的性質から、こうした微粒子を堆積物から分離する技術を確立した。その上で主要・微量元素の組成を分析した結果、微小マンガン粒は海水中で形成されたことが示唆され、鉄やマンガン等の主要金属元素だけでなく、レアアースのような有用希少金属を多く含むことが分かった。特にマンガンについては、地層中に含まれるマンガンの30~60%、重さにして1.28~7.62 兆トンのマンガンに相当することが明らかとなった。これは、海底表層のマンガン団塊やコバルトリッチクラストに含まれるマンガン総量の100~1000倍に相当し、膨大なマンガンが微粒子状の形で海底下に埋もれていることを示している。以上から、これまで存在すら知られていなかった金属酸化物の微粒子が、海洋での金属元素循環や物質保持メカニズムを理解する上で重要な役割を果たすことが明らかなった。また、本研究で確立した環境試料から特定の微細粒子を精密かつ高速に分離・回収する技術は、今後、微粒子解析の基礎技術として、様々な応用展開が期待される。