日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI34] 海底マンガン鉱床の環境,開発,地球史

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:臼井 朗(高知大学海洋コア総合研究センター)、高橋 嘉夫(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)、伊藤 孝(茨城大学教育学部)

[MGI34-P02] 北西太平洋拓洋第3海山で見られた超平滑表面を持つマンガンクラストについて

*齋藤 真輝1伊藤 孝2 (1.茨城大学大学院教育学研究科、2.茨城大学教育学部)

キーワード:マンガンクラスト、拓洋第3海山、超平滑表面、3Sマンガンクラスト

北西太平洋に位置している拓洋第3海山において,海洋研究開発機構(以下JAMSTEC)の研究航海KR17-07C(2017年4月23日〜2017年5月1日),KR18-11C(2018年8月11日〜2018年9月3日)が実施された.遠隔操作型無人探査艇(ROV)「かいこう」を用いた調査によって,拓洋第3海山の斜面全体にマンガンクラストが広がっており,厚い酸化物層を持っていることが明らかとなった.さらに,マンガン酸化物の表面が極めて肌理細かく平滑な面をもつクラストが複数観察された.これまでマンガン酸化物の表面構造はs(平滑:smooth)型とr(粗:rough)型の2つに分類されており,一般にクラストはs型とされてきた.しかし,今回観察された平滑面は明らかに周囲のクラストの表面構造とは異なっており,新たな分類が必要となる可能性がある.

本研究では,この超平滑面を持つマンガンクラストの分布の特徴,および表面構造について予察的な検討を行った。分布の特徴の検討には,JAMSTEC所有のROV「かいこうMk-IV」に搭載されているデジタルスチルカメラで撮影された画像データを用いた.これらの画像は,潜航中に船上オペレーターがランダムにシャッターを切ったものである.解析はKR17-07C航海中に撮影された画像を1枚ずつ確認し,超平滑面を持つクラストを目視できた画像をカウントした.超平滑面を持つかどうかは,画像内においてROVのライトの光が反射されることで黒光りしているかどうかで判断した.また,超平滑面を持つクラストの分布頻度の目安として,調査時間あたりの画像枚数を計測し,その深度における頻度(枚/min)も産出した.

画像解析の結果,拓洋第3海山において超平滑面をもつクラストの分布には明らかな水深依存性があり,水深1400〜1600m付近に卓越し分布していることが明らかとなった.また,超平滑面はクラストの表面全体に広がっているわけではなく,クラストの側面部に多く見られた.

KR18-11C航海で採取された試料に対してSEM観察を行ったところ,超平滑面はそれ以外の部分の表面構造と明確な違いが見られた.超平滑面の表面はSEM観察のレベルにおいても,文字通り極めて平滑であるが,長さ数十μmほどの傷が多数ついていることも確認できた.この傷は一方方向からのみではなくランダムな分布に見えた.今後,超平滑面を持つクラストと通常のクラスト間で鉱物・化学組成等を比較検討するなど,超平滑面の形成過程などは明らかにしていく予定である.