日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI37] 情報地球惑星科学と大量データ処理

2019年5月26日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:村田 健史(情報通信研究機構)、本田 理恵(高知大学自然科学系理工学部門)、野々垣 進(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質情報研究部門 情報地質研究グループ)、堀之内 武(北海道大学地球環境科学研究院)

[MGI37-P05] マルチスペクトル光学センサ画像の観測波長帯と空間の高分解能化による鉱物マッピング精度の向上

*小池 克明1Hoang Nguyen1野田 周帆2淺野 友紀瑛2川上 裕2増田 一夫2 (1.京都大学大学院工学研究科 都市社会工学専攻地殻環境工学分野、2.(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構)

キーワード:ハイパースペクトル画像、熱水変質鉱物、多変量回帰モデル、短波長赤外域、キュープライト、ゴールドフィールド

地質分野で広く用いられる光学センサによるマルチスペクトル衛星画像は,地球表面のほぼ全域をカバーしているが,画像の観測波長数は少なく,鉱物や地質の識別精度は低いのに加えて,地表の詳細がわかるほど空間分解能が高くはない。これらが詳細にわかる多波長数のハイパースペクトル画像や高解像度画像が利用できるのはごく狭い範囲に限られ,コストが高い。そこで本研究では,一般のマルチスペクトル衛星画像をその撮影範囲全体にわたって,①ハイパースペクトル画像に変換できる手法,および②地質リモートセンシング分野で現在の最高水準の空間分解能まで画像を鮮明化できる手法の開発を進めている。最終的には高分解能でハイパースペクトル画像のシミュレーションを目指す。これによって,リモートセンシングによる金属・地熱資源探査と地質環境監視の精度・有効性の大幅向上を図る。以下,マルチスペクトル画像,ハイパースペクトル画像,マルチスペクトルの高分解能画像をそれぞれMS,HP,HSRと略し,各代表としてASTER(MS),AVIRIS(HP),WorldView-3(WV-3:HSR)を選んだ。鉱物識別で特に重要となる短波長赤外域(SWIR)でのASTER,WV-3の空間分解能はそれぞれ30 m,7.5 mである。
 観測波長帯の高分解能化①に関しては著者らが開発した手法であるPHITA(Pseudo-Hyperspectral Image Transformation Algorithm: Hoang and Koike, 2017; 2018)を用いた。これはMSとHPバンドの反射率を多変量回帰式によって関連付け,最適なモデルをベイズ理論によって選択するという原理である。正確な位置合わせを施したMSとHSRでは,MSの1ピクセルはHSRの複数のピクセルに対応する。例えばASTER画像の1ピクセルはWV-3画像の4×4ピクセルからなる。画像1ピクセルのサイズを小さくするという②では,まず太陽照射方向やバンドのスペクトル応答などを考慮してMSとHSRのラジアンスを補正した。次に,MSの1ピクセルのラジアンスはHSRの複数のラジアンスの和であるという仮定を設け,これらの関係を汎用性の高い多変量回帰モデルであるGeneralized additive model(Stasinopoulos et al., 2018)で表した。
 ASTER,WV-3,AVIRIS画像のいずれもが利用可能であり,代表的な熱水変質帯として知られているアメリカ西部ネバダ州のキュープライトをトレーニングエリアとし,機械学習のアルゴリズムを適用した。①・②ともにターゲットは,キュープライトの近くにあり浅熱水鉱床域のゴールドフィールドである。①ではASTER画像をAVIRIS画像とPHITAによってHPに変換し,それらの関係をゴールドフィールドでのASTER画像のHP化に用いた。その結果,ASTER画像よりも明礬石,カオリナイトなどの変質鉱物の識別精度が大幅に向上した。また,②に関してはASTERとWV-3で共通するSWIRの4つのバンドをダウンスケーリングに用いた。①と同様にキュープライトでの規則性をゴールドフィールドに適用し,ASTER画像をWV-3画像の空間分解能まで向上させたところ,ASTER画像の空間分解能以上に明礬石などの分布域を詳細に推定できた。これら①と②の結果は,2018年10月~11月にかけて実施した現地調査,それによるサンプルのXRD分析により検証でき,本研究によるHP化とHSR化の有効性が確かめられた。


Hoang, N. T., Koike, K. (2018) Comparison of hyperspectral transformation accuracies of multispectral Landsat TM, ETM+, OLI and EO-1 ALI images for detecting minerals in a geothermal prospect area. ISPRS J. Photogramm. Remote Sens., v. 137, pp. 15-28.
Hoang, N. T., Koike, K. (2017) Transformation of Landsat imagery into pseudo-hyperspectral imagery by a multiple regression-based model with application to metal deposit-related minerals mapping. ISPRS J. Photogramm. Remote Sens., v. 133, pp. 157-173.
Stasinopoulos, M. D., Rigby, R. A., Bastiani, F. D. (2018) GAMLSS: A distributional regression approach. Stat. Modelling, v. 18, pp. 248-273.