12:00 〜 12:15
[MIS02-12] 阿蘇火山地帯にある深度700メートルの鉛直掘削孔内の温度分布
キーワード:掘削孔、温度、地温勾配
火山や地震などに係わる様々な地球科学的な現象の解明ならびに関連する地球工学的な応用の分野においては、地下の温度構造ならびに地殻熱流量を知ることが不可欠である。本研究では、阿蘇火山の西麓域に位置する布田川断層帯の温度構造を明らかにする目的で、当該断層帯を貫く深度700 mの鉛直掘削孔を利用して、その孔内の温度分布を測定した。
2016年4月16日に横ずれ断層タイプの布田川断層を震源断層として、Mw 7.1の熊本地震の本震が発生した。その後、深度700 mの掘削調査孔(略称:FDB孔)は断層試料採取のために、2017年9月~2018年3月の間に熊本県益城町で掘削され、布田川断層を貫通した。
本研究では、2018年5月からFDB孔の温度分布を2~3か月に1回の頻度で繰り返し測定を行った。低温の掘削泥水の影響による局所的な地層の温度擾乱が認められ、その回復に伴う局所的な温度の経時変化があったものの、深度約50~650 mにおいて、再現性の高い温度プロファイルを得ることができた。地表の影響がないと考えられる深度約200~310 mおよび深度430~650 mの区間では、深くなるにつれほぼ直線的に地温が高くなる温度構造が認められた。その地温勾配は55 ℃/km程度であり、平均的な地温勾配の20~30 ℃/kmより高いが、阿蘇火山地帯の特徴であると考えられる。しかし、FDB孔の深度約310~430 mの120 m間においては、ほぼ一定の温度(地温勾配が約1 ℃/km)となり、この深度区間以外の平均的な地温勾配よりはるかに小さい結果となった。この120 m区間での極めて低い地温勾配1 ℃/kmは、当該掘削孔から採取されたコア試料で実測された熱伝導率の変化から説明できず(佐野ほか、2019JpGU)、非常に特異的なものであると考えられる。今後、この温度構造が本当の天然現象なのか否か、観測等を積み重ね、慎重に確かめる予定である。また、これが本当の天然現象であれば、地下水流動が関係すると推測され、これの形成メカニズムを解明したい。
2016年4月16日に横ずれ断層タイプの布田川断層を震源断層として、Mw 7.1の熊本地震の本震が発生した。その後、深度700 mの掘削調査孔(略称:FDB孔)は断層試料採取のために、2017年9月~2018年3月の間に熊本県益城町で掘削され、布田川断層を貫通した。
本研究では、2018年5月からFDB孔の温度分布を2~3か月に1回の頻度で繰り返し測定を行った。低温の掘削泥水の影響による局所的な地層の温度擾乱が認められ、その回復に伴う局所的な温度の経時変化があったものの、深度約50~650 mにおいて、再現性の高い温度プロファイルを得ることができた。地表の影響がないと考えられる深度約200~310 mおよび深度430~650 mの区間では、深くなるにつれほぼ直線的に地温が高くなる温度構造が認められた。その地温勾配は55 ℃/km程度であり、平均的な地温勾配の20~30 ℃/kmより高いが、阿蘇火山地帯の特徴であると考えられる。しかし、FDB孔の深度約310~430 mの120 m間においては、ほぼ一定の温度(地温勾配が約1 ℃/km)となり、この深度区間以外の平均的な地温勾配よりはるかに小さい結果となった。この120 m区間での極めて低い地温勾配1 ℃/kmは、当該掘削孔から採取されたコア試料で実測された熱伝導率の変化から説明できず(佐野ほか、2019JpGU)、非常に特異的なものであると考えられる。今後、この温度構造が本当の天然現象なのか否か、観測等を積み重ね、慎重に確かめる予定である。また、これが本当の天然現象であれば、地下水流動が関係すると推測され、これの形成メカニズムを解明したい。