日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS08] ジオパーク

2019年5月27日(月) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学島嶼防災研究センター)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)

[MIS08-P05] おおいた豊後大野ジオパーク,軸丸棚田(日本の棚田百選)の形成と地形・地質環境

*吉岡 敏和1 (1.おおいた豊後大野ジオパーク推進協議会)

キーワード:軸丸棚田、日本の棚田百選、大野川層群、阿蘇火砕流、おおいた豊後大野ジオパーク

おおいた豊後大野ジオパーク内に位置する軸丸棚田は,日本の棚田百選の一つに選定された棚田である.この地域は,大野川と緒方川に挟まれた丘陵地帯で,緒方川支流の軸丸川水系の浅く小規模な谷によって開析されている.棚田はこれらの谷底を中心に形成されている.
この地域の地質は,上部白亜系の海成堆積物である大野川層群の霊山層と,それを広く覆って分布する阿蘇3および阿蘇4火砕流堆積物で構成されている.大野川層群霊山層は主に砂岩および礫岩で構成され,風化が進んでいる.また一部には風化した円礫層を載せる.この円礫層は風化程度から更新世前期ないし中期と推定されている平石礫層に対比可能である。阿蘇3および阿蘇4火砕流堆積物は,弱溶結ないし非溶結の軽石流堆積物を主とし,地域北側を流れる大野川沿いにのみ,柱状節理を伴う強溶結部分を伴っている.火砕流の堆積原面は浸食により失われ,ほとんど残存していない.
調査の結果,棚田が分布する範囲の西部と北部において,大野川層群の堆積岩が丘陵頂部まで分布し,それを不整合関係で覆うように非溶結ないし弱溶結の阿蘇4火砕流(一部阿蘇3火砕流)堆積物が広がっていることが判明した.すなわち,阿蘇火砕流堆積前には大野川層群からなるゆるやかな起伏を持った丘陵が存在し,その起伏を埋めるように阿蘇3および阿蘇4火砕流堆積物が堆積したと考えられる.これらの火砕流堆積物は,周辺の谷を埋めた部分と比較して厚さが薄く,溶結度も低いため,谷頭浸食により谷が形成されやすいと考えられる.これに対し地域北側の大野川沿いと南側の緒方川沿いでは,阿蘇4火砕流堆積物は強く溶結しているため,両側の河谷からの側方浸食は受けにくい.そのため,地域内部では浸食基準面が比較的高い位置にでき,棚田に適当な浅く広い谷が形成されたと考えられる.
このように軸丸棚田の形成は地形・地質の条件と密接に関係しており,今後,おおいた豊後大野ジオパークの構成要素として積極的に組み込んでいくことが可能となった.