日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] 最新の大気科学:ダスト

2019年5月30日(木) 13:45 〜 15:15 102 (1F)

コンビーナ:石塚 正秀(香川大学)、黒崎 泰典(鳥取大学乾燥地研究センター)、関山 剛(気象庁気象研究所)、長島 佳菜(海洋研究開発機構 地球環境観測研究開発センター)、座長:関山 剛

13:55 〜 14:15

[MIS09-01] 大気から海洋へ供給される鉱物および燃焼起源鉄を含んだエアロゾルの全球モデル解析

★招待講演

*伊藤 彰記1山本 彬友1渡辺 路生1相田 真希1Ye Ying2 (1.海洋研究開発機構、2.アルフレッドウェゲナー極地海洋研究所)

キーワード:鉱物起源ダスト、燃焼起源エアロゾル、大気からの栄養塩供給

大気から海洋へと供給されるエアロゾルは、海洋表層の栄養塩(窒素、リン、鉄)濃度を変化させることで、植物プランクトン(一次生産者)を起点とした食物連鎖(海洋生態系)に影響を与える。しかし、海洋へのエアロゾル供給量が、海水中の溶存鉄濃度および海洋生態系へ与える定量的な影響についてはよく理解されていない。本研究では、全球エアロゾル化学輸送モデルと2種類の海洋物質循環モデルを用いて、大気から海洋へ供給される溶存鉄供給量の違いが海水中の溶存鉄濃度へ与える影響に関して議論する。

標準実験では、全球エアロゾル化学輸送モデルで鉱物および燃焼起源鉄を含んだエアロゾルに対して、大気中での化学的変質過程を考慮に入れた。それに対して、鉱物起源エアロゾルのみを用いて、大気中での化学変質過程を考慮に入れた場合とダスト中の鉄濃度と鉄溶解率を固定した場合との感度実験を行った。

感度実験結果によると、東アジアの風下に当たる北太平洋亜寒帯において、2種類の海洋物質循環モデルは、付加した鉱物および燃焼起源鉄がもたらす植物プランクトンの増殖に類似した空間分布を示した。一方、その応答強度には大きな違いが見られた。さらに、北太平洋域では、観測データ数としては少ないながらも、大気モデルでは再現できないほど、エアロゾル中で高い溶存鉄濃度を示す観測データが得られている。そのため、東アジア域から大気を通して北太平洋へと供給される溶存鉄の動態に関する理解を深める必要がある。