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[MIS09-07] 原子間力顕微鏡を用いた個別エアロゾル粒子の付着力測定
キーワード:黄砂、原子間力顕微鏡(AFM)、付着力、長距離輸送、沈着、変質
原子間力顕微鏡によるフォースカーブマッピングから個別エアロゾル粒子の付着力を定量的に評価する手法を開発した。この手法を検証するため、まずモデル大気エアロゾルとしてPSL、硫酸アンモニウム、石英砂を対象にフォースカーブマッピング測定を実施し、付着力の分布と代表値が取得できることを確認した。その後、実大気中エアロゾル粒子への応用として、金沢大学キャンパス内で採集された長距離輸送後の黄砂を対象に付着力測定を実施した。走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析(SEM-EDX)によって実大気エアロゾル粒子のタイプを同定し、粒子の種類間で付着力の比較を行った。変質したケイ酸塩主体の黄砂粒子は変質前の黄砂粒子よりも付着力が増加しており、硫酸塩エアロゾルや海塩粒子といった無機塩粒子の付着力に近い値を示した。Ca-richな黄砂はケイ酸塩主体の粒子よりも大きな付着力を持っており、変質黄砂粒子の化学組成の違いによる付着力の差が明らかとなった。さらに、有機物に富むと考えられるいくつかの粒子は、変質したCa-rich黄砂粒子よりもさらに高い付着力を示した。以上の結果は、内部混合粒子の付着力評価におけるフォースカーブマッピングの有効性と同時に、個別粒子レベルで付着力を評価する必要性を示すものである。