09:15 〜 09:30
[MIS10-02] 生物由来の微細組織を利用した新しい水産廃棄物処理プロセスと化学蓄熱材料の開発
キーワード:カルサイト、貝、熱分解
貝殻などの水産廃棄物は主に炭酸カルシウムからなる。これらの一部は肥料、飼料などに利用されているが、大部分は1000℃以上の高温で焼却処分されている。この焼却処分には大量の燃料とコストが必要なため、水産廃棄物の処理問題は水産業における大きな負担となっている。持続可能な地域の水産業を維持するためには、この焼却プロセスの省エネ化と、水産廃棄物の新しい利活用法の開拓が重要である。
著者らはすでに、これら貝殻などの焼成は、純粋な炭酸カルシウムに比べ最大70℃程度低い温度でも酸化カルシウムへの熱分解が可能であることを見出している。そこで本研究では、貝殻など水産廃棄物の熱分解温度を実験的に測定し、この分解反応における速度論的考察を試みた。また、貝殻等の焼成によって得られる酸化カルシウムの新しい利用法の開拓に向けて、化学蓄熱材としての評価を行ったので、その結果について報告する。
洗浄後、粒径を63-125 μmに粉砕したホタテ、マガキの貝殻およびキタムラサキウ棘と純度99.95% のカルサイト試薬数十 mgをAr雰囲気下で5℃/min、 から40℃/minの速度で昇温させながら酸化カルシウムへの熱分解速度を示差走査熱量測定で調べた。昇温速度と反応終了温度との関係から各試料の熱分解反応の活性化エネルギーおよび頻度因子を評価した。
また、焼成によって得られたカルシウムの蓄熱材としての機能を評価するために、ホタテガイ、マガキ、キヌマトイガイ、ウズマキゴカイおよびキタムラサキウニ(棘)を電気炉内で1000℃、2時間の加熱で焼成し酸化カルシウムを作成した。得られた酸化カルシウムを水と反応させて水酸化カルシウムを生成した。生成した水酸化カルシウム数十 mgをAr雰囲気下で20℃/minの昇温速度で加熱してDSCによる熱測定を行い、これらの熱分解挙動を調べた。各試料に対して3回測定を行い、測定した温度の標準偏差を不確かさとして評価した。
各種の殻や棘の熱分解反応の終了温度は、昇温速度に依存した。カルサイト試薬では819℃から926℃、ホタテガイでは785℃から907℃、マガキでは761℃から887℃、キタムラサキウニの棘では761℃から880℃へと昇温速度が速くなるに従い、高くなった。試料毎の熱分解反応の活性化エネルギーには8%程度の違いしか見られなかった。よってこの反応終了温度の違いは主に頻度因子によって生じていると考えられる。
一方、水酸化カルシウムの熱分解挙動ではカルサイト試薬およびホタテガイから生成した水酸化カルシウムの熱分解終了温度が最も高く、510℃以上の温度が必要である。ウズマキゴカイ、マガキ、キヌマトイガイの順に熱分解終了温度は低下し、ウニの棘から生成した水酸化カルシウムが500℃以下の最も低い温度で熱分解した。
このことから、種による反応終了温度の差異は、試料中の微量成分などの化学的性質によるものではなく、それぞれの種に固有な微細構造によってもたらされる表面積の違いなどによって引き起こされたと考えられる。
以上の結果より、貝殻等は、カルサイト試薬の熱分解温度よりも低温で分解できるだけでなく、カルサイト試薬から得られる材料よりも反応性が高い酸化カルシウムや水酸化カルシウムが貝殻の焼成によって得られることが分かった。 この違いは貝殻等の微細構造によって生じたと考えられる。また貝殻等の粒度調整によって、焼却温度をより低下できること、反応性の異なる酸化カルシウムや水酸化カルシウムを得ることができるが可能性が示唆された。
著者らはすでに、これら貝殻などの焼成は、純粋な炭酸カルシウムに比べ最大70℃程度低い温度でも酸化カルシウムへの熱分解が可能であることを見出している。そこで本研究では、貝殻など水産廃棄物の熱分解温度を実験的に測定し、この分解反応における速度論的考察を試みた。また、貝殻等の焼成によって得られる酸化カルシウムの新しい利用法の開拓に向けて、化学蓄熱材としての評価を行ったので、その結果について報告する。
洗浄後、粒径を63-125 μmに粉砕したホタテ、マガキの貝殻およびキタムラサキウ棘と純度99.95% のカルサイト試薬数十 mgをAr雰囲気下で5℃/min、 から40℃/minの速度で昇温させながら酸化カルシウムへの熱分解速度を示差走査熱量測定で調べた。昇温速度と反応終了温度との関係から各試料の熱分解反応の活性化エネルギーおよび頻度因子を評価した。
また、焼成によって得られたカルシウムの蓄熱材としての機能を評価するために、ホタテガイ、マガキ、キヌマトイガイ、ウズマキゴカイおよびキタムラサキウニ(棘)を電気炉内で1000℃、2時間の加熱で焼成し酸化カルシウムを作成した。得られた酸化カルシウムを水と反応させて水酸化カルシウムを生成した。生成した水酸化カルシウム数十 mgをAr雰囲気下で20℃/minの昇温速度で加熱してDSCによる熱測定を行い、これらの熱分解挙動を調べた。各試料に対して3回測定を行い、測定した温度の標準偏差を不確かさとして評価した。
各種の殻や棘の熱分解反応の終了温度は、昇温速度に依存した。カルサイト試薬では819℃から926℃、ホタテガイでは785℃から907℃、マガキでは761℃から887℃、キタムラサキウニの棘では761℃から880℃へと昇温速度が速くなるに従い、高くなった。試料毎の熱分解反応の活性化エネルギーには8%程度の違いしか見られなかった。よってこの反応終了温度の違いは主に頻度因子によって生じていると考えられる。
一方、水酸化カルシウムの熱分解挙動ではカルサイト試薬およびホタテガイから生成した水酸化カルシウムの熱分解終了温度が最も高く、510℃以上の温度が必要である。ウズマキゴカイ、マガキ、キヌマトイガイの順に熱分解終了温度は低下し、ウニの棘から生成した水酸化カルシウムが500℃以下の最も低い温度で熱分解した。
このことから、種による反応終了温度の差異は、試料中の微量成分などの化学的性質によるものではなく、それぞれの種に固有な微細構造によってもたらされる表面積の違いなどによって引き起こされたと考えられる。
以上の結果より、貝殻等は、カルサイト試薬の熱分解温度よりも低温で分解できるだけでなく、カルサイト試薬から得られる材料よりも反応性が高い酸化カルシウムや水酸化カルシウムが貝殻の焼成によって得られることが分かった。 この違いは貝殻等の微細構造によって生じたと考えられる。また貝殻等の粒度調整によって、焼却温度をより低下できること、反応性の異なる酸化カルシウムや水酸化カルシウムを得ることができるが可能性が示唆された。