日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 水惑星学

2019年5月27日(月) 13:45 〜 15:15 A02 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、座長:関根 康人(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、臼井 寛裕渋谷 岳造(海洋研究開発機構)

14:00 〜 14:15

[MIS11-02] 氷衛星・氷惑星環境を模したガスハイドレート試料の同位体測定:装置開発および測定法の検討

*工藤 久志1谷 篤史1吉田 尚弘2,3 (1.神戸大学 大学院人間発達環境学研究科、2.東京工業大学 物質理工学院 応用化学系、3.地球生命研究所)

キーワード:同位体測定、同位体分別、メタン、氷衛星・氷惑星、ガスハイドレート

近年のカッシーニによる観測から、氷衛星・氷惑星は有機物を含んだプルームや内部に液体状の海や岩石地殻を有することが知られている。その事から、地球外生命活動が存在する可能性が高いとされている。プルームを構成するガス分子の中でも、メタン(CH4)ガスは、CH4生成菌によるCH4生成反応という切り口から、微生物による生命活動の指標を示唆する候補の一つとして挙げられている。しかし、プルームにおけるCH4ガスの生成過程について、初期に発生したCH4や岩石での地質化学的な生成の寄与が不明瞭であることから、CH4の存在を検知するだけでは、微生物による生命活動があるといいきることができない。この現状を踏まえると、近い将来行われる氷衛星の微量ガスの同位体測定を見据え、氷衛星の環境を模したCH4の安定炭素・水素同位体(δ13C, δD)の分別の素過程を室内実験により評価することが重要と考える。

 本研究では、内部海–氷地殻界面においてCH4を補捉し、プルーム放出に影響を及ぼしうるCH4ハイドレート(Kieffer et al. 2006)に着目し、その同位体分別の程度を評価していきたいと考えている。地球内の条件(~10 MPa)では、CH4ハイドレートの形成に伴い、δD のみ同位体分別(~10‰)が確認された(e.g. Hachikubo et al. 2007, 2015; Lapham et al. 2012)。氷衛星・氷惑星の条件の場合、更に広い圧力範囲(10–100 MPa スケール)での同位体分別の有無や程度を評価する必要がある。そのために必要な装置の設計、および、測定法の検討を進めた。発表では、装置開発の現状や測定法について紹介する。
 本研究では、上記のCH4ハイドレートへの取り込みと放出の解析を行った後、岩石地殻表層におけるCH4生成の素過程における同位体分別、それらのデータに基づく3次元流体シミュレーションによる内部海におけるCH4の輸送の解析により、氷衛星・氷惑星におけるCH4の同位体がどのように変化していくかを評価していく計画を考えている。対象天体は、エンケラドス、エウロパ、および、トリトンとする。