日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 水惑星学

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 A02 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、座長:関根 康人(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、福士 圭介臼井 寛裕

16:00 〜 16:15

[MIS11-09] 火星における水および粘土鉱物の傾斜角に対する影響

*松岡 友希1片山 郁夫1野口 里奈2臼井 寛裕2 (1.広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻、2.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)

キーワード:火星、水、傾斜角

内部摩擦角は,水と粘土鉱物の影響を強く受ける摩擦係数によって決定される.間隙水は有効圧を減少させ,内部摩擦角は小さくなる.すると,ドライ条件では約35度となる摩擦角がウェット条件では約25度になると考えられる.また,多くの鉱物は摩擦係数0.6-0.85でほぼ一定となることが知られているが,粘土鉱物は水の存在によって0.1と非常に低い摩擦係数を示す例も知られている(e.g. Behnsen and Faulkner, 2012; Moore and Lockner, 2004).その場合,摩擦角も非常に小さくなると考えられる.安息角はおおよそ内部摩擦角と等しいと考えられるため,傾斜角も水およびウェット条件の粘土鉱物の存在によって著しく小さくなる可能性があげられる.
粘土鉱物は火星の広い範囲で確認されている(Ehlmann and Edwards, 2014).そこで、火星の地形における傾斜角に注目し,水が存在した可能性のある領域においてその影響が見られないかを検証した.

本研究ではまずRecurring Slope Lineae(RSL)に注目した.RSLとは,火星において流動する水の証拠になるのではないかと考えられている黒い筋のことである(e.g. McEwen et al., 2011; Stillman et al., 2017).複数のRSLがマリネリス峡谷東部に位置するコプラテス・カズマにおいて確認されている.今回,RSLが確認されている地域と確認されていない地域において傾斜角を比較した.
コプラテス・カズマにおいては10地点の傾斜角を算出した.ほぼすべての領域で傾斜角は31-37度という結果となり,RSLや水和珪酸塩の存在による違いは見られなかった.そのため,コプラテス・カズマでは水および粘土鉱物による傾斜角の影響は卓越していないと結論付けた.
また,他の火星において水が存在した可能性のある地域についても同様の手法を用いて検証を行う.