日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 津波堆積物

2019年5月30日(木) 09:00 〜 10:30 コンベンションホールB (2F)

コンビーナ:千葉 崇(秋田県立大学生物資源科学部)、篠崎 鉄哉(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、石村 大輔(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理学教室)、座長:石村 大輔(首都大学東京大学院都市環境科学研究科)

09:30 〜 09:45

[MIS12-03] 北海道ホロカヤントウにおける2016年6月の低気圧による高波に伴う沿岸地形変化とウォッシュオーバー堆積物

*千葉 崇1西村 裕一2 (1.秋田県立大学生物資源科学部、2.北海道大学大学院理学研究院)

キーワード:ウォッシュオーバー堆積物、砂州決壊、離水湖底、珪藻群集、ホロカヤントウ

北海道東部太平洋岸に形成されているラグーンの1つであるホロカヤントウでは,2016年6月に発生した低気圧に伴う水位上昇と波浪等の結果,海域と湖を隔てる砂州の南西部が決壊して湖水が海域へ流出した.これに伴い,決壊前はおよそ3.1 mであった湖水位が1.2 mまで低下し,湖底が部分的に露出した.このときの湖水位(1.2m)は,十勝港におけるMHHTLの高さに相当する.砂州南西部の決壊した地点では侵食地形が認められた.一方,砂州の北東部では、海域側から湖側(陸域側)への波浪によって形成された,ウォッシュオーバーファンが認められた.このウォッシュオーバーファンの先端は湖内にまで達しており,極粗粒砂などの粗い砂から構成されていたが,最上部は淡水珪藻が多産する泥質堆積物により部分的に覆われていた.このことは,流出した湖水に含まれる淡水種が海生種とともに,波浪の影響で湖に再流入した可能性を示している.
 さらに,沿岸の環境変化に伴う特徴的な珪藻群集の変化も湖周辺で認められた.露出した湖底から,高潮位付近の指標となるPseudopodosira kosugiiが,淡水-汽水性及び汽水性-海生種とともに出現した.また,Denticulopsis sppなどの新第三紀海生珪藻化石も現生珪藻群集中に認められた.新第三紀海成珪藻化石は,ホロカヤントウ周辺に分布する新第三系の基盤岩から低気圧の影響により浸食を受けて流出し,再堆積したものと推定された.こうしたイベント堆積物中に認められるリワーク珪藻の特徴は,それらの起源を推定し混入のプロセスを理解する上で重要である.