日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 津波堆積物

2019年5月30日(木) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:千葉 崇(秋田県立大学生物資源科学部)、篠崎 鉄哉(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、石村 大輔(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理学教室)

[MIS12-P01] サンゴ質津波堆積物を用いた年代推定法の検討

*藤田 稜介1後藤 和久1井龍 康文1石澤 尭史1横山 祐典2宮入 陽介2 (1.東北大学、2.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:津波堆積物

津波堆積物の年代測定には,一般的に再堆積物である津波堆積物中ではなく通常環境で堆積した上下の土壌層中の有機物を用いて行われる.しかしながら,この方法は沖縄県のように亜熱帯地域に属し,植生による擾乱が激しい地域では不向きである.そのため,津波堆積物中の試料を用いた年代測定が必要であるが,再堆積物を用いてイベント年代を推定するには,多点測定に基づく統計的な検討が不可欠である.本研究では,サンゴや貝殻などの生物殻から主に構成される沖縄県水納島の単一の砂礫質津波堆積物中の海生生物遺骸12点の放射性炭素年代測定を行い,堆積物の年代推定を予察的に試みた.
 測定された年代値は,A.D. 1000–1200ごろ(グループA,試料数7),A.D. 750–1000ごろ(グループB,試料数3),B.C. 1000–700ごろ(グループC,試料数2)の3つの年代に集中する傾向がある.試料観察およびXRD,SEM分析により,グループA,Bには,摩耗の程度が比較的少なく陸水の影響も少ないと考えられる試料が属しているのに対し,グループCには摩耗の程度が激しい試料と比較的摩耗が少ない試料が混在していた.
 この砂礫質津波堆積物を堆積させた津波イベントの年代は,最も摩耗の程度が少なく,かつ最新の年代を示すグループAに属する試料から推定されるA.D. 1000–1200ごろとするのが妥当だと考えられる.一方,グループBの試料は摩耗の程度はグループAと同程度であるにもかかわらず推定される津波年代よりもやや古い年代値を示しており,例えば津波発生前に死滅し礁池表層等に堆積していたサンゴ片が津波によって運ばれた可能性が考えられる.一方,有意に古い年代を示すグループCの試料は,海岸ないしはサンゴ礁内の海中に古くから堆積していたものが津波によって再堆積した可能性が考えられる.
 このように,適切な試料選定を行えば,津波堆積物中の試料から津波発生年代を推定できる可能性があり,試料選定法および統計的解析法を検討していく予定である.