日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] 生物地球化学

2019年5月27日(月) 10:45 〜 12:15 201A (2F)

コンビーナ:木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、座長:木庭 啓介(京都大学)、稲垣 善之藤井 一至

12:00 〜 12:15

[MIS13-06] 日本の森林生態系における養分供給源:降水、風化、リターの寄与率

*稲垣 善之1藤井 一至1 (1.森林総合研究所)

キーワード:養分循環、風化、植物の吸収、森林生態系

カリウムやカルシウムなどの塩基性カチオンは樹木の生育にとって重要な養分物質である。土壌中の塩基性カチオンは、降水または岩石の風化によって土壌に供給される。また、樹木の地上部バイオマスからは、リターフォールや樹冠の洗脱によって土壌に塩基性カチオンが供給される。岩石の風化速度は、降水による供給量、渓流水からの流出量、樹木のバイオマスへの蓄積量(養分吸収量)から算出する。土壌への寄与を明らかにするためには、樹木の養分吸収量について、長期的なバイオマスへの蓄積速度と、毎年の吸収量の2つを明らかにすることが必要である。日本においては、多くの森林で養分収支が明らかにされたが、土壌の養分の3つの給源を比較することができる研究事例は限られている。本研究では、日本の4地域の森林生態系の研究結果を用いて、降水、風化、リターの寄与を明らかにすることを目的とする。調査対象としたのは、大谷山(群馬県)、上賀茂(京都府)、桐生(滋賀県)、鷹取(高知県)の森林流域である。大谷山はスギ人工林、ヒノキ人工林、上賀茂はヒノキ林、常緑広葉樹林、桐生は、ヒノキ人工林、アカマツ林、鷹取はモミ天然林である。カリウム、カルシウム、マグネシウムについて、土壌への供給として、降水、風化、リター、消費として、樹木吸収、土壌からの流出を算出した。カリウム、カルシウム、マグネシウムの風化速度は、0.22~4.37 kmolc ha-1 yr-1であり、上賀茂<桐生<大谷山<鷹取の順に大きくなった。カリウムは、風化速度に比べてリターによる土壌への供給が大きく、土壌からの流出は極めて小さかった。カルシウム、マグネシウムは、風化速度が大きい鷹取で、土壌からの流出が大きかった。森林生態系によって母材の風化速度が大きく異なるが、樹木によるリター供給は比較的一定に維持されることが示された。窒素についても同様の計算を行い、風化に該当する部分は、土壌の長期的な蓄積からの供給として評価した。窒素の長期的な蓄積からの供給は、大谷山で36%を占めたが、他の3つの流域では0%であった。大谷山は、窒素飽和状態の森林であると考えられているが、今回の手法により、他の生態系と異なる窒素源に依存することが示唆された。