14:30 〜 14:45
[MIS13-10] 微量安定同位体トレーサーを利用した水圏環境下における酸素消費速度定量
キーワード:酸素消費速度、安定同位体、トレーサー、貧酸素水塊、光呼吸
酸素 (O2) は強力な酸化力を持ち、地球表層環境を特徴づける重要な物質の一つである。海洋、湖沼、地下水といった水圏環境においては、供給過程 (光合成や大気とのガス交換) と消費過程 (呼吸) の大小によって、O2濃度が大きく変動する。O2が枯渇して貧酸素状態になると、水質の劣化や青潮、生物の大量死等の環境問題を引き起こす。さらに栄養塩などの共存物質の挙動も大きく変わる。従って溶存O2の消費速度の大小やその規定因子を明らかにすることは、環境科学的にきわめて重要な課題である。
従来、水中の酸素消費速度は、容器内の試料水を一定時間培養し、培養前後のO2濃度変化を測定することで求める方法(O2濃度変化法)が最も一般的であった。だが、この手法は感度が低く、貧栄養湖や外洋中深層の酸素消費速度は定量出来ない。またO2濃度変化法は、遮光して培養する必要がある。つまり表層の有光環境下で採取された試料水の場合、これを遮光しても酸素消費速度は変わらないことを仮定する必要があるため、確度にも問題があった。
そこで、本研究では、酸素の微量安定同位体 (17O) をトレーサーに用いて、酸素消費速度を高感度、高確度かつ簡便に定量出来る新手法を開発した。この新手法では、17Oを濃縮したO2 (17O2) を密閉容器中の水試料に添加し、一定の培養期間中に進行する呼吸 (酸素消費反応) で増大するH217O量を高精度に定量化することで、酸素消費速度を求める。
はじめに、超純水を用いた新手法のブランク評価を行った。次に遮光環境下で培養した水試料について、従来のO2濃度変化法との比較実験を通じて確度の検証を行った。その結果、新手法で求めた酸素消費速度は、従来法と誤差内で一致した。
次にこの新手法を用いて、琵琶湖の湖心部(水深約90 m)で5-10 m毎に各層採水を行い、酸素消費速度の鉛直分布を実測した。その結果、一次生産が活発な表層(=有光層)で速く、深層水中で遅くなることが明らかになった。これは新鮮な有機物量の大小が酸素消費速度を決めていることを示唆する。また、表層(=有光層)内で採取した試料に光を当てて培養すると、同じ試料を遮光して培養した場合と比べて、酸素消費速度が速くなることが明らかになった。これは従来の暗瓶法で求めた酸素消費速度は、過小見積もりとなっていた可能性を示唆する。さらに、酸素消費速度を定量化することで、貧酸素水塊発生の主要因の区別 (水柱か、それとも堆積物か) や、貧酸素水塊発生までの所要時間の予測出来ることが明らかになった。
従来、水中の酸素消費速度は、容器内の試料水を一定時間培養し、培養前後のO2濃度変化を測定することで求める方法(O2濃度変化法)が最も一般的であった。だが、この手法は感度が低く、貧栄養湖や外洋中深層の酸素消費速度は定量出来ない。またO2濃度変化法は、遮光して培養する必要がある。つまり表層の有光環境下で採取された試料水の場合、これを遮光しても酸素消費速度は変わらないことを仮定する必要があるため、確度にも問題があった。
そこで、本研究では、酸素の微量安定同位体 (17O) をトレーサーに用いて、酸素消費速度を高感度、高確度かつ簡便に定量出来る新手法を開発した。この新手法では、17Oを濃縮したO2 (17O2) を密閉容器中の水試料に添加し、一定の培養期間中に進行する呼吸 (酸素消費反応) で増大するH217O量を高精度に定量化することで、酸素消費速度を求める。
はじめに、超純水を用いた新手法のブランク評価を行った。次に遮光環境下で培養した水試料について、従来のO2濃度変化法との比較実験を通じて確度の検証を行った。その結果、新手法で求めた酸素消費速度は、従来法と誤差内で一致した。
次にこの新手法を用いて、琵琶湖の湖心部(水深約90 m)で5-10 m毎に各層採水を行い、酸素消費速度の鉛直分布を実測した。その結果、一次生産が活発な表層(=有光層)で速く、深層水中で遅くなることが明らかになった。これは新鮮な有機物量の大小が酸素消費速度を決めていることを示唆する。また、表層(=有光層)内で採取した試料に光を当てて培養すると、同じ試料を遮光して培養した場合と比べて、酸素消費速度が速くなることが明らかになった。これは従来の暗瓶法で求めた酸素消費速度は、過小見積もりとなっていた可能性を示唆する。さらに、酸素消費速度を定量化することで、貧酸素水塊発生の主要因の区別 (水柱か、それとも堆積物か) や、貧酸素水塊発生までの所要時間の予測出来ることが明らかになった。