日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS16] 火山噴煙・積乱雲のモデリングと観測

2019年5月30日(木) 09:00 〜 10:30 A05 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:佐藤 英一(気象研究所)、前野 深(東京大学地震研究所)、前坂 剛(防災科学技術研究所)、座長:佐藤 英一(気象研究所)

09:30 〜 09:45

[MIS16-03] 気象庁の気象レーダー網で観測した2018〜2019年口永良部島の噴煙・火山灰雲エコーについて

*佐藤 英一1福井 敬一2新堀 敏基1 (1.気象研究所、2.気象庁)

キーワード:火山噴火、口永良部島、気象レーダー

口永良部島の新岳では、2018年10月21日にごく小規模な噴火が発生し、その後も断続的に12月13日まで継続した。その後、12月18日や2019年1月17日、29日に火砕流を伴う噴火が発生している。気象庁の遠望カメラ観測では、雲のため、先の2回の噴火の噴煙高度を確認することはできなかったが、気象衛星ひまわり8号や京都大学防災研究所のXバンドMPレーダーによって噴煙が観測されたことが報告されている。一方、気象庁の気象レーダー網でもこれらの噴火が観測されており、それらを用いた解析について報告する。
 2019年1月17日の噴火に伴う噴煙エコーは、種子島レーダーと名瀬レーダーで観測されていた。噴煙エコー高度は、種子島レーダーによって海抜約6.7km、名瀬レーダーによって海抜約6.5kmと観測された。この観測結果は、気象衛星ひまわり8号による解析結果である、火口縁上約6km(海抜約6.6km)と整合的である。一方、防災研究所のレーダーでは、海抜約4kmまでしか噴煙エコーが観測されていなかったが、これは風の鉛直シアの影響が考えられる。対流圏下層では北西風、中層(3km~6km)では西風になっていたため、鉛直断面を観測する125°RHI観測では噴煙のトップを捉えられなかった可能性がある。
 一方、2018年12月18日や2019年1月29日の噴火事例含めたその他の事例では、気象庁のレーダー網では適切に噴煙エコーを捉えることが出来なかった。その原因としては、その他の事例では特に噴煙のトップ付近の火山灰密度が低かったことと、レーダーのスキャンシーケンスと噴煙の上昇過程のミスマッチが起きていたことが考えられる。
 気象レーダーによる解析の結果、噴火活動の一部を捉えることが出来た一方で、適切に捉えられなかった事例も多くあった。気象レーダーによる観測手法の限界を示すと共に、可能な対応策について示したい。


参考文献:
福岡管区気象台地域火山監視・警報センター・鹿児島地方気象台(2019):口永良部島の火山活動解説資料(平成31年1月), <https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/monthly_v-act_doc/fukuoka/19m01/509_19m01.pdf> (2019年2月18日アクセス).
京都大学防災研究所(2019):口永良部島2019年1月17日噴火のレーダー観測. <http://www.svo.dpri.kyoto-u.ac.jp/new/wp-content/uploads/2019/01/RadarKuchinoerabu20190117.pdf> (2019年2月18日アクセス).