日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS16] 火山噴煙・積乱雲のモデリングと観測

2019年5月30日(木) 09:00 〜 10:30 A05 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:佐藤 英一(気象研究所)、前野 深(東京大学地震研究所)、前坂 剛(防災科学技術研究所)、座長:佐藤 英一(気象研究所)

10:00 〜 10:15

[MIS16-05] 霧島新燃岳2011噴火の映像解析

*小堀 壮彦1木下 紀正1飯野 直子2真木 雅之1福島 誠治1 (1.鹿児島大学、2.熊本大学)

キーワード:噴煙、画像解析、数値標高モデル

霧島新燃岳2011噴火の噴煙規模と放出の時間発展について検討する.前報[1-3]の多点映像観測と各種衛星画像による噴煙拡散解析に加え,大浪池火山監視カメラ(鹿児島県[4])映像や公開されている写真などを解析する.
噴煙の映像解析では,山頂と水平線を基準にした写真解析プログラム[5]を改良し,国土地理院の標高タイル[6]から作成した稜線と映像内の地形をフィッティングして画像計測する方法を開発した.稜線を作成する際に地球の曲率を考慮することで正確なフィッティングが可能となり,噴煙の海抜高度を精度良く見積もれるようになった.
霧島新燃岳では2008年から噴気や白煙がしはしば見られたが,2011年1月19日1時27分の小噴火で初めて新鮮なマグマ物質を含む火山灰が確認された[7].その後,1月22-25日には連続噴煙に変った[1-3].このとき,噴煙は流されつつ約5-7km下流まで上昇し,最上部は海抜1700-2200mに達して水平に移流した.同様な定常的灰煙放出による連続噴煙は26日15時頃まで続き,下流3-4kmで最高点の1700-1900mに達した.26日の地表付近は大気混濁で視界が悪い状態であったが,新燃岳の南南西50kmの観測定点では15時30分以後の準ブリニー式噴火の発達経過と噴煙流全景を捉えた近赤外ビデオ映像と写真が得られた.また大規模灰煙の上部は新燃岳の南西58kmの鹿児島市南部および北38kmの観測定点の人吉盆地の可視Webカメラでも捉えられた[1].これらを鮮明化処理して画像計測を行った結果,噴煙は下流7-8kmまで上昇し,最上部は海抜5000-6000m,まれに7000mに達していることがわかった.これは種子島及び福岡の気象ドップラーレーダの解析から求めた海抜高度7000m(精度1km)[8]に近い.27日の映像観測では朝から勢いの良い連続噴煙が見られ,15時30分と15時41分の爆発から準プリニー式噴火に移行し,海抜7000-8000mに達する猛煙が各定点から見られた.
謝辞:鹿児島県姶良・伊佐地域振興局河川港湾課の観測画像データ提供に深く感謝します.

[1] 木下他,霧島新燃岳爆発噴煙の映像観測と衛星画像解析, JpGU,SVC070-P16, 2011.
[2] 木下,霧島新燃岳噴火と災害危機対応, 日本の科学者,46,1120-1126, 2011.
[3] 飯野他,霧島新燃岳2011年噴煙の映像観測と移流解析, 熊本大教育紀要,自然科学,60, 69-76,2011.
[4] 鹿児島県姶良・伊佐地域振興局,霧島山火山監視映像/大浪池, 2011.
[5] 木下・吉田, 桜島噴煙流の写真解析, 鹿児島大教育紀要,自然科学,42,1-19,1990.
[6] 国土地理院ウェブサイト(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html#dem)
[7] 下司他, 霧島火山新燃岳2011 年1月噴火を駆動したマグマ,JpGU,SVC050-04,2011,
[8] 新堀他,気象レーダー・衛星による火山噴煙観測-2011年霧島山(新燃岳)噴火の事例-, 験震時報,77, 139-214, 2013.