日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 歴史学×地球惑星科学

2019年5月27日(月) 09:00 〜 10:30 201B (2F)

コンビーナ:加納 靖之(東京大学地震研究所)、芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、磯部 洋明(京都市立芸術大学美術学部)、岩橋 清美(国文学研究資料館)、座長:加納 靖之 (東京大学 地震研究所)、岩橋 清美磯部 洋明芳村 圭玉澤 春史

10:00 〜 10:15

[MIS17-04] 「14世紀の危機」についての環境史的考察の試み

*諫早 庸一1 (1.北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター)

キーワード:14世紀の危機、環境史、小氷期、中世の温暖期、ユーラシア史、モンゴル帝国

この報告は「14世紀の危機」について環境史的考察を試みるものである。「14世紀の危機」とは、一般に「中世の温暖期 (Medieval Warm Period: 1000~1300年)」が終わり、「小氷期 (Little Ice Age)」が始まるとされる14世紀に起きた寒冷化や天災の頻発、疫病の流行およびそれに伴うモンゴル帝国(1206~1368年)の崩壊のような政治変動を総合した「危機」を指す。天文学・気象学・地震学のような科学分野と歴史学・アーカイブ学のような人文学分野が共同する我々のプロジェクトは、分野横断的なアプローチでこの「危機」の実態に迫ることを目的の1つとしている。「14世紀の危機」は、これによりアフロ・ユーラシアにまたがった多元的な「13世紀システム」が閉じ、西洋主導の「近代世界システム」への道を開く画期として、かねてより注目されてきた。しかし、「危機」の要因——の少なくともその一部——が小氷期への移行という環境的な要因にあるのであれば、この種の生態環境の激変を考慮に入れなければ「危機」の実態は見えてこない。このプロジェクトは人間活動と生態環境との複雑な関わり合いに新たな光を当てようとするものである。