日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 歴史学×地球惑星科学

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:加納 靖之(東京大学地震研究所)、芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、磯部 洋明(京都市立芸術大学美術学部)、岩橋 清美(国文学研究資料館)

[MIS17-P11] 日本産樹木年輪の炭素14年代測定-年代研究と日本版較正曲線

*坂本 稔1,2箱﨑 真隆1光谷 拓実3中塚 武4,5 (1.国立歴史民俗博物館、2.総合研究大学院大学、3.奈良文化財研究所、4.総合地球環境学研究所、5.名古屋大学)

キーワード:炭素14年代法、年輪年代法、較正年代、地域効果

炭素14年代を暦上の年代に修正するためには,樹木年輪など暦年代の判明した試料の炭素14年代に基づいて整備された「較正曲線」が用いられる。北半球用の較正曲線IntCalには,これまで主に欧米の高緯度地域に生育していた樹木年輪の炭素14年代が用いられてきたが,現在整備が進められている最新版「IntCal19」では,様々な地域のデータが反映される見込みである。
筆者らは過去3,000年間を対象に,日本産樹木年輪の炭素14年代測定を継続してきた。最近は,炭素14-ウィグルマッチ法による文化財建造物の年代研究の需要もあり,中世・近世の日本産樹木年輪の測定にも注力している。その背景には,樹種によらない新しい年輪年代法「酸素同位体比年輪年代法」の実用化がある。暦年代の判明した樹木年輪の入手が格段に容易になり,データの蓄積が急速に進展しつつある。
日本産樹木年輪の炭素14年代は,時期によりIntCalからずれる「地域効果」を見せることがある。特に弥生から古墳にかけての時期が顕著であり,IntCalによる年代較正では実際より古い年代を与えてしまう。また,より高い精度・確度が求められる歴史資料の年代較正には,汎用性を重視し平滑化されたIntCalでは不十分な場合がある。年代研究の推進には,日本産樹木年輪の炭素14年代の挙動を明らかにし,日本版較正曲線の整備を進めることが必要である。
本研究は国立歴史民俗博物館共同研究,および地球研プロジェクト(H-05)による成果の一部である。また,科学研究費補助金(25282075, 18H03594)の支援を受けている。