日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS18] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

2019年5月27日(月) 13:45 〜 15:15 301A (3F)

コンビーナ:伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(海洋研究開発機構 地球深部ダイナミクス研究分野)、相木 秀則(名古屋大学)、座長:中島 健介

14:00 〜 14:15

[MIS18-02] 回転流体における3次元熱対流シミュレーションの流れ構造の解析

*亀山 真典1,2 (1.国立大学法人愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター、2.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:回転流体の熱対流、3次元数値シミュレーション、エクマン湧昇

流体鉄からなる外核のダイナミクスを把握することは、固体地球惑星物理学の分野における最も重要なテーマの1つである。本研究では、外核内対流の理解に向けた3次元箱型モデルでの回転流体の熱対流シミュレーション研究を行った。具体的には、熱対流の激しさを表すレイリー数 Ra、回転の弱さを表すエクマン数 Ek、流体の粘性に関係するプラントル数 Pr、の3つの無次元パラメータを系統的に20通りに変化させ、回転流体の流れ場の特徴的構造を正確かつ簡便に抽出することを図った。この実験から、複雑な現実の外核条件下における回転流体の熱対流の把握につなげることを目的とする。

本研究では高さがL、底面が2L×2Lで鉛直方向に回転軸をもつ直方体の領域の中での流体の熱対流を考える。計算領域は水平方向に128×128または256×256、深さ方向に64または128のメッシュに等分割し、基礎方程式系の離散化は有限体積法に基づいて行った。境界条件として、上下境界面で温度一定かつ速度を0にとり、側壁は周期境界とする。数値シミュレーションには、我々が別途開発したマントル内対流3次元シミュレーションプログラムの技術を転用した独自のプログラムを用いている。

対流の熱輸送効率に基づいて対流の様式を分類したところ、主に Ra と Ek の違いによって (i) 無回転系、(ii) 回転が支配的な状態、(iii) 回転が支配的でない状態、という3つの状態に分けられることを確認した。さらに、上下境界付近における流速と渦度の鉛直成分との相関を調べることにより、このような流れ構造の変化は上下境界面付近におけるエクマン湧昇の発生と強く関連していることが分かった。具体的には、(ii) 回転が支配的な状態では境界から離れる流れと近づく流れの両方にエクマン湧昇が観察されるものの、(iii) 回転が支配的でない状態では境界から離れる流れでのみそれが観察された。

本研究の結果より、水平境界付近における速度と渦構造の相関に注目することが、回転流体の熱対流の特徴を把握する上で特に有用であるといえる。すなわち、地球の核-マントル境界での外核内の鉛直方向の流れと水平面内の渦との相関を解析すれば、回転流体の観点から外核の流れの理解が深められると期待できる。