日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] 古気候・古海洋変動

2019年5月29日(水) 10:45 〜 12:15 304 (3F)

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、加 三千宣(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)、長谷川 精(高知大学理工学部)、座長:岡崎 裕典

11:15 〜 11:30

[MIS19-03] タリム盆地南西縁部第三系の供給源変動から推定される構造運動と砂漠化の関連性

*佐久間 杏樹1多田 隆治1吉田 知紘1長谷川 精2杉浦 なおみ1烏田 明典1王 可1Zheng Hongbo3 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.高知大学理学部、3.雲南大学)

キーワード:タリム盆地、供給源推定、砂漠化

タリム盆地はチベット高原北西部に位置しており、インド亜大陸がユーラシア大陸に衝突したことに起因するチベット高原とその周辺地域の隆起とそれに伴う乾燥化が新生代を通じて進行した地域の一つであると、気候モデル実験の結果から推定されている(e.g. Kitoh, 2005)。しかし、タリム盆地の乾燥化とその周辺地域における隆起の関係を裏付ける地質学的な証拠は十分とは言えない。その原因として乾燥化の証拠として用いられている盆地内部の風成層の年代について、文献ごとに異なる見解が示されていることが挙げられる(e.g. Zheng et al., 2015)。そのため、両者の関係を検証するためには、年代モデルの不確かさに影響されずに乾燥化指標と比較をすることが可能な構造運動の指標を同じセクションから取り出すことが有効である。

本研究では、タリム盆地南西縁部Aertashiセクションにおいて、始新世後期~中新世中期にかけて堆積した河川成細粒砂岩の供給源変化を、64-500μm画分中に含まれる石英の電子スピン共鳴(ESR)信号強度・結晶化度(CI)分析、薄片観察から推定した。そして、供給源の変化から後背地における構造運動の時期を推定し、岩相から推定される乾燥化の時期との比較を行うことにより、両者の関係を調べた。

河川によって運搬されたと考えられる64-500μm画分中に含まれる石英のESR信号強度、CI分析の結果、この画分の供給源変動は6段階のステージに区分されることが分かり、それぞれのステージの境界は約35Ma、約33Ma、約26Ma、約21Ma、約17Maであった。薄片観察からは約17Ma前後で構成粒子の組成が大きく変化することが分かった。具体的には岩片の占める割合が増え、火山岩片が含まれるようになり、苦鉄質鉱物や黒雲母の割合が増加するといった違いが見られた。
ESR信号強度、CI測定の結果から見ると、特に約33Ma、約26Ma、約17Maにおける供給源は大きく変化しており、後背地であるパミール高原での構造運動がこれらの時期に起きた可能性が高いと予想される。一方で、岩相から予想されるタリム盆地における乾燥化開始時期は約35Maであり、タリム盆地における初期の乾燥化にパミール高原における構造運動が影響した可能性は低いと予想される。