日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] 古気候・古海洋変動

2019年5月30日(木) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、加 三千宣(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)、長谷川 精(高知大学理工学部)

[MIS19-P29] 別府湾堆積物に保存された葉理の組成と年縞としての可能性

*鈴木 克明1加 三千宣2新井 和乃3池原 研4村山 雅史3 (1.早稲田大学、2.愛媛大学、3.高知大学、4.産業技術総合研究所)

キーワード:別府湾、年縞

大分県別府湾の堆積物は、とくに水深60m以深の最奥部は半遠洋性軟泥で構成され、その中にイベント的に堆積したと思われる砕屑物層(イベント層)が多数存在する。こうしたイベント層は周辺地域で観測・歴史的に多発している洪水、地震、噴火等の災害を記録している可能性が高い(Kuwae et al., 2013, Yamada et al., 2017)。本研究では、とくに厚さ1cm以下のマイナーイベント層の成因を観測記録との比較に基づいて明らかにするために、2017年6月に別府湾の4地点から採取した表層 堆積物(長さは最長で約1.2m)を用いて、高解像度年代モデルの構築と観測記録との対比を試みた。
 採取した表層堆積物は、高知大学海洋コア総合研究センターにてCTスキャン、半割、断面画像撮影を行った後、蛍光X線マイクロスキャナITRAXを用いた高解像度元素組成分析を行った。また年代決定のため、放射性Pb, Csの濃度変化を4cm間隔で測定した。
 別府湾の最奥部、水深60m以深の堆積物には明瞭な葉理構造が見られた。これらの葉理は複数のコア間でそのパターンが対比可能である。一方で別府湾の水深50m以浅では、より粗粒な構成要素が多くなり、葉理構造はほどんど見られなかった。ITRAXの分析結果およびその因子分析から、葉理は砕屑物の含有量変化によるものであることがわかった。またその他にも砕屑物含有量がスパイク的に増加し、かつ砕屑物組成が異なる層準が多数みられた。これらの層準の一部は明灰色ないし赤褐色の砕屑物に富んだ薄層、すなわちマイナーイベント層として肉眼でも確認でき、砕屑物が通常時と異なる供給源から大量に流入したことを示唆している。
 放射性Pb, Csの測定結果は、先行研究で知られている豊後水道地震起源と考えられるイベント層Ev-1a(Kuwae et al., 2013)と概ね矛盾しない年代値が得られた。また葉理の計数を行ったところ、葉理の保存が悪い区間に関しては葉理の平均厚さ6~7mmを内挿すれば、葉理の累積枚数がPb, Csから得られた年代と矛盾しないことがわかった。このことから、別府湾最奥部の葉理は季節毎に異なる物質が流入し、擾乱なく保存されることで形成される年縞堆積物である可能性が高い。もし葉理が年縞であるなら、表層堆積物に年単位の高解像度な年代目盛を挿入でき、堆積物と観測記録の詳細対比が行える。