日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS20] 山の科学

2019年5月27日(月) 13:45 〜 15:15 103 (1F)

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科)、座長:奈良間 千之(新潟大学)

14:30 〜 14:45

[MIS20-16] 西穂高岳近郊で発生する雲海及び滝雲の発生形態

★招待講演

*粟澤 徹1 (1.国立大学法人信州大学 理学部)

キーワード:槍・穂高連峰、雲海、滝雲、逆転層

槍・穂高連峰には3000m級の山々が連なり、またこの西南端に位置する西穂高岳から焼岳、乗鞍岳へと続く山稜も概ね2000mを超えている。大気境界層は温帯地方では1000m以内といわれているが、この地域では連なる山々によって岐阜県と長野県との大気境界層が分断される状況がしばしば発生する。このような状況下において日本海側から湿った空気が下層に流入すると、岐阜県側にせき止められる形となる。更に高気圧によって沈降性逆転層が形成される等の事象が発生すると、逆転層を境に層積雲が空を埋め尽くし、雲海が発生する。発生時の気象状況を解析した結果、下層の湿った空気の流入にいくつかのパターンがあることが分かった。また、生成された雲海が維持されるための下層湿りの供給と、消失時の日射の影響についても検証した。

また、西穂山荘付近において滝雲がしばしば発生するが、これは槍・穂高連峰から焼岳へと連なる稜線の中で西穂丸山-焼岳間が最も低いことによるものである。この山域に見られる滝雲には二つのパターンがあることが分かった。ダイナミックなものは、雲海発生時に高気圧の弱まりや、下層の湿った空気の流入が強化される等の事象が加わることにより、雲海の高度が高まり、西穂丸山-焼岳間から長野県側へと雲が溢れることによって発生する。小規模なものは、笠雲のように斜面に沿って上昇した空気が雲を作り、下降する際に消失することによって発生するものであるが、いずれにしても西穂丸山-焼岳間の標高が低いことが、発生の大きな要因をなしている。