[MIS20-P04] 中部山岳地域における降水安定同位体比の変動要因
キーワード:降水、同位体
中部山岳地域の9地点(長野,松本,諏訪,大町,菅平,乗鞍,上高地,志賀高原,西穂高)において2011年1月から2016年12月にかけて1ヶ月ごとに降水試料採取をするとともに気象観測を行った.採取した水試料は実験室に持ち帰り安定同位体比分析を行い,D,18Oを求め,さらにd-excessを算出した.18Oは採取量による加重平均を行い月平均値とした.月平均値を求めて18Oの季節変動を検討した結果,18Oは春季と夏季にピークを示す2山型の変動を示した.空間的な変動を調べるため緯度,経度,標高と18Oとの決定係数を算出した結果,4月から10月にかけて標高と明瞭な相関を示した.d-excessは冬に高く夏に低くなるというような季節変動を示した.また空間的な変動として,夏季は標高との相関が高くなり,冬季は経度の違いによる変動が主であった.また,この様な変動がもたらされる要因について考察する為,各地点での降水時の気温,降水量,持ち上げ凝結高度(LCL)と降水のδ18Oとd-excessとの相関係数を算出して影響の強さを考察した.δ18Oについては西穂高を除く8地点で気温と正の相関を示した.特に松本,菅平,大町,諏訪,長野の5地点では比較的高い値を示した.降水量との関係については大町,長野,西穂高を除く6地点で弱い負の相関を示した.LCLとの関係については概ね正の相関があり,諏訪,長野で特に高い相関係数が認められた.これらのことから降水中のδ18Oに寄与しているのは気温が主であると考えられ,さらに松本,菅平,大町,諏訪,長野で相関が高かった事から都市部でその影響が強くなっている可能性がある.d-excessは気温,降水量に対し負の相関を示し,LCLとの間には特に有意な関係は認められなかった.特に気温との関係においては強い相関が見られたことから,d-excessの変動に対する寄与は主に気温であると考えられた.