[MIS21-P09] ロシア沿海地方沖の堆積物間隙水の地球化学的特徴
キーワード:ガスチムニー、メタン
近年の海洋調査で、日本海東縁の海域には表層型メタンハイドレートの形成を支持するガスチムニー構造が数多く見つかっている。ロシア沿海地方沖はガスチムニーが発達する日本海辺縁域の北端部に位置し、日本海盆とタタールトラフが接する。本研究では日本海盆北縁からタタールトラフ南西部まで海域の、ガスチムニーを含む様々な水深から採取された堆積物間隙水とヘッドスペースガスの化学分析結果から、この海域に分布するガスチムニー構造の地球化学的な特徴を明らかにすることを目的とした。調査はロシア沿海地方沖の南部と北部の二つの海域で行われ、重力コアラーを使用して堆積物を回収した。調査期間中に同時に行われたSCSによる調査では、南部の海域には明瞭なガスチムニー構造はほとんど認められず、コアは水深(陸からの距離)や緯度(SCSの測線)の異なる地点から採取された。一方、北部の海域では、複数の顕著なガスチムニーが認められ、その周辺からもコアが採取された。
間隙水中の硫酸イオンは堆積物深部から供給されるメタンを酸化するため、海底面直下で濃度が急激に低下する。メタンフラックスが大きくなれば硫酸イオンの濃度勾配は大きくなり、より浅部に硫酸―メタン境界(sulfate-methane interface: SMI)が出現する。両海域とも硫酸イオンは深度ともに直線状に減少していたが、全体的に北部の海域の方が南部にくらべてSMI深度が浅く、メタンフラックスが大きいことが明らかになった。これは、大陸(調査海域西方のロシア沿海地方)よりも、タタールトラフに沿って供給された有機物が、メタンの主な起源となっているためであると考えられる。
また、特に北部のガスチムニー直上で採取したコアでメタンフラックスが大きかったが、水深が浅いガスチムニーで特にメタンフラックスが大きい傾向が見られた。これは、トラフ底の堆積物深部で生成したメタンが間隙率の高い地層に沿って西側の斜面を上昇し、圧力の低下とともに相対的な濃度が上昇してガスチムニーを作っている可能性を示唆する。
南部ではガスチムニーサイトの数も少ないが、間隙水溶存ガスがリファレンスサイトと同等かそれ以下の濃度を示しており、南部の海域においてはガスチムニーが相対的にガスの供給源として非活発的である可能性が示唆された。さらに北部ではSMI深度が浅い、ガスチムニーサイトであるなどの共通点を持つコア同士でも濃度に差が表れたことから、水深や堆積環境によって堆積物中におけるガスの滞留のしやすさが異なっていると考えられる。ガスのC1/C2比は表層付近で小さな値を示すコアが多く見られ、これはAOMによってメタンのみが選択的に消費されたことが原因である。また、北部ではSMI深度付近でスパイク状に上昇するコアがいくつか見られた。これはSMI付近で微生物により、メタン生成が行われている可能性が考えられる。
間隙水中の硫酸イオンは堆積物深部から供給されるメタンを酸化するため、海底面直下で濃度が急激に低下する。メタンフラックスが大きくなれば硫酸イオンの濃度勾配は大きくなり、より浅部に硫酸―メタン境界(sulfate-methane interface: SMI)が出現する。両海域とも硫酸イオンは深度ともに直線状に減少していたが、全体的に北部の海域の方が南部にくらべてSMI深度が浅く、メタンフラックスが大きいことが明らかになった。これは、大陸(調査海域西方のロシア沿海地方)よりも、タタールトラフに沿って供給された有機物が、メタンの主な起源となっているためであると考えられる。
また、特に北部のガスチムニー直上で採取したコアでメタンフラックスが大きかったが、水深が浅いガスチムニーで特にメタンフラックスが大きい傾向が見られた。これは、トラフ底の堆積物深部で生成したメタンが間隙率の高い地層に沿って西側の斜面を上昇し、圧力の低下とともに相対的な濃度が上昇してガスチムニーを作っている可能性を示唆する。
南部ではガスチムニーサイトの数も少ないが、間隙水溶存ガスがリファレンスサイトと同等かそれ以下の濃度を示しており、南部の海域においてはガスチムニーが相対的にガスの供給源として非活発的である可能性が示唆された。さらに北部ではSMI深度が浅い、ガスチムニーサイトであるなどの共通点を持つコア同士でも濃度に差が表れたことから、水深や堆積環境によって堆積物中におけるガスの滞留のしやすさが異なっていると考えられる。ガスのC1/C2比は表層付近で小さな値を示すコアが多く見られ、これはAOMによってメタンのみが選択的に消費されたことが原因である。また、北部ではSMI深度付近でスパイク状に上昇するコアがいくつか見られた。これはSMI付近で微生物により、メタン生成が行われている可能性が考えられる。