日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22] 地震・火山等の地殻活動に伴う地圏・大気圏・電離圏電磁現象

2019年5月29日(水) 15:30 〜 17:00 A07 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:児玉 哲哉(宇宙航空研究開発機構研究開発部門第一研究ユニット)、長尾 年恭(東海大学海洋研究所)、座長:児玉 哲哉長尾 年恭

15:30 〜 15:45

[MIS22-01] 高温火成岩の圧力誘起電荷計測: 地震前電離層擾乱への影響

*山中 千博1前薗 大聖1 (1.大阪大学大学院 理学研究科)

キーワード:電離層擾乱、日置テック異常現象、応力誘起電荷

2011年に日置によって報告された巨大地震直前の30-40分前における電離層総電子密度(TEC)異常現象(Heki’s TEC anomalies)は、巨大地震との相関が高く、強い関心をもたれている。TECは日常的に変動していることが知られているが、この現象は地震震源上空に固定された空間で見られることから、全地球的な磁気嵐や局所的な移動性電離層擾乱(TID)とは区別が可能である。また1994年以来の18回の地震で観測されており、地震の規模が大きいほど観測の確率が高く、Mw8.5を越えた5回の地震ではその全てでこの現象が見られている。さらにTEC異常の大きさ(地震直前のTEC増大量)と現象の先行時間において、地震のM依存性が見られる事も興味深い。観測的には、電離層のトモグラフィー観測や磁気共役点での同時観測データーなどが報告され、電離層下部における電子密度上昇現象であること、その領域の大きさ、地磁気に沿った電磁気的な現象であることなどが判明している。
 我々は地殻の応力誘起の結果、地表面に薄く広く分布した電荷が電離層下部に影響を与える可能性を考え、室内実験による岩石の応力誘起分極を実測するとともに、関与する電磁場シミュレーションを行ってきた。今回、圧電効果を持たない斑レイ岩を用い、含水率をゼロとした上で、試料を震源地殻の温度となる350℃付近まで加温し、冷却中における誘起分極を測定した。本実験では、試料岩石(10×10×3 cm3)の両端にタンタル電極を固定し、その間に流れるピコアンペア相当の電流をエレクトロメーターで測定した。
まず予備加圧として、一軸圧縮試験機を用いて、試料左端付近の位置の上下面から0.56 MPa を印加して、エレクトロメーターの応答が安定したのちに、荷重速度0.24 MPa/secで10 MPaまで加圧し、そこで200秒静止した。次いで同じ荷重速度で減圧し、0.56 MPaで100秒静止後、再荷重を繰り返し室温まで冷却した。
 結果は、加圧時、減圧時ではそれぞれ等しい大きさの反対電流が流れること、また室温から470Kまでは、電流が増大(~250 pA)するが、それ以上の温度では、電流は減少し、550Kでは室温と同程度の電流(~50 pA)となった。このときの電荷の拡散に必要な活性化エネルギーとして0.27-028 eV が得られた。高温における電流量の抑制は、電気伝導度ではなく、電荷発生の抑制であると考えられる。講演では実験結果と計算機シミュレーションを用いてHeki’s TEC anomalyのメカニズムを議論する。
[1] K. Heki, (2011), Geophys. Res. Lett. 38, L17312.
[2] L. He and K. Heki(2017), J. Geophys. Res. Space Phys., 122, 8659-8678.
[3] K. Heki and Y. Enomoto(2015) , J. Geophys. Res. Space Phys., 120, 7006-7020.
[4] L. He and K. Heki(2017), J. Geophys. Res. Space Phys., 123, 4015-4025.