[MIS24-P03] 内部重力波の影響を考慮したGPS-A観測について
キーワード:GPS音響、海中音速、内部重力波、海底地殻変動
GPS-A観測の測位精度に直結する海中音速の取り扱いについて、水平成層構造を仮定した従来の「成層モデル」から、水平方向の長波長空間不均質を傾斜構造で近似した「勾配モデル」を適用する取り組みが本格化しつつある。キャンペーン観測中持続するような time-invariant な勾配については、海底局3局以上なら移動観測で、5局以上なら定点観測で解く方法が定式化され、実データでも補正効果が実証されている。一方、5局以上の定点観測の場合、時間変化する勾配についても原理的には解けることが示されているが、実データへの適用では効果を上げていない。我々は、走時残差の周期的なゆらぎから、時間変化する空間不均質の要因が内部重力波であると考え、実在する内部重力波の典型的な波長が勾配近似に耐え得るかどうかを、数値実験により検証した。
はじめに、傾斜近似が破綻する内部波の波長について数値的に調べ、波長が海底局アレイの広がり(水深と同程度)と同程度以下になると、モデル誤差が許容できない量になることを見出した。次に、そのような短波長の内部波が観測点付近に存在するかどうかを、次に示す手順で検証した。内部波の励起源である伊豆・小笠原リッジからGPS-A観測点のある熊野灘を通り、主な潮汐流の向きともほぼ平行な2次元断面について、主要4分潮による順圧潮汐流と海底地形との相互作用で励起される内部波を数値シミュレーションにより再現した。M2分潮に相当する波長100km程度の半日周期の内部波が卓越する中、非線形相互作用でカスケードダウンされた短波長の内部波も無視し得ない振幅で存在することがわかった。得られた内部波によって振動するポテンシャル密度プロファイルから音速場を時間の関数として算出し、それに基づいたGPS-Aの疑似観測走時を作成して測位解の時系列を求めたところ、実測で得られる測位解のゆらぎと同程度の周期・振幅を持つことがわかった。さらに詳しく見ると、浅い部分の内部波は周期1時間程度のゆらぎのため、振幅は大きくてもある程度の時間平均で除去できるのに対し、深い部分の内部波は比較的周期が長く時間平均による除去が困難で、測位解の系統誤差の最大の原因となっていることを突き止めた。
この深い部分の内部波をモデル化し解析に組み入れるために、空間不均質の形状を規定せずに、個々の海底局周辺の水塊ごとに音速の時間変化を推定する「各局擾乱モデル」を提案した。推定すべき未知数が勾配モデルより多くなるため、海上局を2つにして走時データを増やす方法を採用する。最近では自律観測可能な海上プラットフォームの開発も進んでおり、海上多点観測は近い将来実現可能な方法であると考えている。現在、最適な海上局配置について、数値実験および解析的手法により検討中である。
はじめに、傾斜近似が破綻する内部波の波長について数値的に調べ、波長が海底局アレイの広がり(水深と同程度)と同程度以下になると、モデル誤差が許容できない量になることを見出した。次に、そのような短波長の内部波が観測点付近に存在するかどうかを、次に示す手順で検証した。内部波の励起源である伊豆・小笠原リッジからGPS-A観測点のある熊野灘を通り、主な潮汐流の向きともほぼ平行な2次元断面について、主要4分潮による順圧潮汐流と海底地形との相互作用で励起される内部波を数値シミュレーションにより再現した。M2分潮に相当する波長100km程度の半日周期の内部波が卓越する中、非線形相互作用でカスケードダウンされた短波長の内部波も無視し得ない振幅で存在することがわかった。得られた内部波によって振動するポテンシャル密度プロファイルから音速場を時間の関数として算出し、それに基づいたGPS-Aの疑似観測走時を作成して測位解の時系列を求めたところ、実測で得られる測位解のゆらぎと同程度の周期・振幅を持つことがわかった。さらに詳しく見ると、浅い部分の内部波は周期1時間程度のゆらぎのため、振幅は大きくてもある程度の時間平均で除去できるのに対し、深い部分の内部波は比較的周期が長く時間平均による除去が困難で、測位解の系統誤差の最大の原因となっていることを突き止めた。
この深い部分の内部波をモデル化し解析に組み入れるために、空間不均質の形状を規定せずに、個々の海底局周辺の水塊ごとに音速の時間変化を推定する「各局擾乱モデル」を提案した。推定すべき未知数が勾配モデルより多くなるため、海上局を2つにして走時データを増やす方法を採用する。最近では自律観測可能な海上プラットフォームの開発も進んでおり、海上多点観測は近い将来実現可能な方法であると考えている。現在、最適な海上局配置について、数値実験および解析的手法により検討中である。