11:00 〜 11:15
[MSD44-07] 数値予報精度向上のための衛星搭載ドップラー風ライダーによる全球風観測
キーワード:ライダー、ドップラー風ライダー、衛星観測、全球風高度分布
数値予報において衛星観測システムの役割は、年々大きくなるばかりである。しかし、現在の衛星観測システムは、風観測に比べて温度や水蒸気に関連した観測に偏重しているという課題がある。また、既存の衛星風観測システムは、高い時間分解能で広範囲を面状に観測できるが、風速観測精度や高度分解能は十分ではない。世界気象機関は,WMO technical report 2012-1において「気象予測精度をさらに向上するために、全球規模で風の高度分布を得ることが出来るセンサーの開発が望まれる」と述べている。レーザを用いるドップラー風ライダー(Doppler Wind Lidar:DWL)は、衛星軌道に沿った狭い範囲の観測ではあるものの、高精度かつ高い分解能で風の高度分布が得られることから、現在の衛星観測システムの問題点(透き間)を解決する能動型光センサーとして期待されている。ESAは2018年8月に世界初の衛星搭載ドップラー風ライダーAeolusを打ち上げた。Aeolusはミッション期間が3年間であるため、次のドップラー風ライダーが期待される。日本でも衛星搭載度ドップラー風ライダーを実現するために、2011年度より、情報通信研究機構、宇宙航空研究開発機構、気象庁・気象研究所I、大学他とともに、衛星搭載ドップラー風ライダーのシステム検討や数値予報への影響評価を実施し、衛星搭載化の知見を取り込み、より技術的実現性が高まっている。また、2017年度に、内閣府の宇宙ビジネス促進イベント「S-Booster」にて、衛星搭載度ドップラー風ライダーの観測データを航空航路最適化に用いるというANAホールディングス社のの社員による提案が大賞を受賞しており、衛星搭載ドップラー風ライダーに社会的注目が集まっている。本提案は、ドップラー風ライダーによる風の高度分布の全球観測を実現し数値予報の精度向上を目的としている。また、気象による自然災害発生や気候変動のメカニズムの分析を通して台風・集中豪雨等の予報精度を向上させることを目的とする。そして、宇宙データの利活用の観点から数値予報の風精度向上による航空機の飛行経路や高度最適化による燃料削減やCO2削減に資することを目的とする。