[M-SD44] 将来の衛星地球観測

[MSD44-P03] 小型降水レーダコンステレーション

*古川 欣司¹、小川 俊明²、沖 理子¹、久保田 拓志¹、山地 萌果¹ (1.宇宙航空研究開発機構、2.日本電気株式会社)

キーワード：小型降水レーダ、コンステレーション

宇宙航空研究開発機構(JAXA)と日本電気株式会社（NEC）は、全球降水観測計画主衛星搭載二周波降水レーダ（GPM/DPR）の開発を行った。GPM/DPRは2014年に打上げられ、その観測データはJAXAが提供する世界の雨分布速報（GSMAP）に取り込まれるなど、様々に活用されている。GPM/DPRはマイクロ波放射計による降水観測に比べて、海上／陸上の区別なく高精度の観測が可能であり、降雨の高度プロファイルが取得可能であるなどの点で優れている。一方で、GPM/DPRは観測幅が比較的狭く、かつ1機しか運用されていないことから、同一地点の観測頻度が少ないことが課題である。本提案ではこの課題を解決するため、GPM/DPRを構成するKu帯降水レーダ（KuPR）をベースとして小型衛星に搭載可能な降水レーダを開発し、運用機数を増やすことにより同一地点の観測間隔を約6時間程度に短縮することを目標とする。なお、本降水レーダはNECが開発した小型衛星バスNEXTAR-300Lに搭載することを想定している。

本提案の小型降水レーダコンステレーションでは、GPM/DPRに対して同一地点の観測頻度を大幅に改善することができる。衛星機数は増加するが、降水レーダおよび衛星バスとも既開発品を活用すること、および比較的安価な小型衛星に搭載することで、システム全体のコストを抑制する。降水レーダおよび衛星バスとも既開発品を活用することを想定し、1機目の開発コストとして100億円以下（地上設備、打上げ、運用費除く）を目標とする。

本降水レーダの、実利用的展開としては、同一地点の観測頻度が増加することで、天気予報の精度向上、台風や集中豪雨による水害発生予測など防災面での活用が想定される。また、科学的には熱帯域の高頻度観測による、降水の日変化の研究に役立つと考えられる。なお、本降水レーダの観測データは東南アジア諸国（インドネシア、フィリピン、ベトナム等）などでも活用可能であり、関心のある国々に開発・打上げを分担してもらうことで、衛星コンステレーションを構築すること想定（ODAによる実現）している。

また、技術的展開としては、更なる小型化・低コスト化により、コンステレーション機数の増加を図り、更なる高時間分解能観測を図る。