日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-SD 宇宙開発・地球観測

[M-SD44] 将来の衛星地球観測

2019年5月29日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:本多 嘉明(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、高薮 縁(東京大学 大気海洋研究所)、Shinichi Sobue(Japan Aerospace Exploration Agency)、金子 有紀(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)

[MSD44-P08] 地球の健康診断 -温暖化対策効果の早期検証と大気汚染実態把握のためのSLCPイメージング分光観測-

*笠井 康子1金谷 有剛2谷本 浩志3大気化学会 大気環境衛星検討委員会4 (1.情報通信研究機構、2.海洋研究開発機構、3.国立環境研究所、4.大気化学会  大気環境衛星検討委員会)

キーワード:大気汚染、衛星、回折格子型イメージング分光計

人間活動により排出される短寿命気候汚染物質(SLCP(※))のインベントリ把握を行う衛星コンステ観測計画である.SLCPは大気汚染と気候変動の双方に複雑に関係しており,それらを紐解き効果的な改善を導く.SLCPはCO2と比較し削減効果が短期的に得られるため,地球温暖化対策の新たな手法として,閣僚級の国際的取組みが2012年より開始された (CCAC).また,大気汚染に起因する死亡者数は世界で370万人程度であり(WHOレポート2012),これは交通事故死者数の約3倍に相当する.特に我が国の早期死亡者率はOECD国で最高レベルにあり事態は深刻である.また,農作物への影響も無視できない.
 SLCPは排出源が局所的であり,実態把握のためには空間分解能1kmクラスの観測が必要であるが、技術的困難さのためこれまで存在していない.本提案SLCPイメージング分光計(UV/VIS/SWIR)は低軌道衛星に搭載,世界で初めての高水平分解能(目標:水平分解能1~2km)を実現する.さらに追加オプション機能としてMIR+MW分光観測シナジーにより、地上付近SLCP物質(特に健康被害に影響のあるオキシダント)検出を提案する.空間分解能から本センサは世界の大気汚染衛星観測の「標準機」としての機能を有し、本機の存在により,世界衛星を結んだコンステレーションが可能になる.これにより,世界中の衛星データを統合し,最高水準の科学的知見を得て,エビデンスに基づく施策を促すものである.(※)ここではCH4, 対流圏オゾン, ブラックカーボン,PM2.5等 のほか,前駆物質としてのNO2を想定.