日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

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[M-ZZ50] 越境火山災害をめぐるガバナンス

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:阪本 真由美(兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科)、中道 治久(京都大学防災研究所附属火山活動研究センター)、荒木田 勝(アジア防災センター)

[MZZ50-P01] 越境火山災害をめぐるガバナンスー2010年エイヤフィヤクトラヨークトル山噴火の事例よりー

*阪本 真由美1 (1.兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科)

キーワード:越境災害、火山、ガバナンス、エイヤフィヤクトラヨークトル

大規模噴火が発生すると、被害は国内にとどまらず国を超えて広域に及ぶことがある。2010年4月に発生したアイスランドのエイヤフィヤクトラヨークトル火山の噴火の事例は、越境する被害に対する国際ガバナンスの重要性を示した。アイスランド国内の災害対応は迅速であり、地域住民の早期避難により噴火による人的被害は防ぐことができた。しかしながら、火山灰による航空機の被害を懸念し、ヨーロッパでは航空機の欠航や空港閉鎖等の措置がとられ、国際経済・産業に大きな影響を及ぼした。噴火により示された課題は以下の通りである。
第一に、火山灰の広域拡散に対する国際協調の重要性である。2010年の噴火においては、アイスランドを所管する英国気象庁ロンドン火山灰予報センター(VAAC)がアイスランド気象庁(IMO)から提供される観測情報に基づき、火山灰の拡散予測を行い関係機関に情報を伝達した。IMOとロンドンVAACは噴火を想定した情報共有訓練を実施していたものの、情報伝達のタイミングや頻度について詳細な検討は行われていなかった。火山灰の拡散予測については、発生源となる国と広域観測を行う国との連携を改善するとともに、衛星画像解析や被害が想定される国での実測値に基づき情報を更新する必要がある。
第二に、発生源となったアイスランドにおける観測情報発信の体制である。噴火発生直後より、アイスランドには国内外のマスメディアから噴火に関する多数の問い合わせが相次いだ。迅速に情報を提供するために、アイスランド政府は、国家危機調整指揮センター(NCCCC)に関係省庁の専門情報官から構成される情報チームを設置した。また、国家科学諮問委員会の委員である科学者が情報提供へのサポートを実施し、英語での迅速な情報発信に取り組んだ。このような、国際社会に対する情報発信の仕組みは平常時より検討しておく必要がある。
アイスランドの噴火対応の事例は、各国異なる制度規範において構築・運用されている防災システムでは越境災害には対応が困難であるという課題を提示した。また、越境災害に対応するための条約やレジームは、火山災害の分野においては未整備の状況である。国際的に拡散する被害を軽減するには、発生源となる国、広域的な観測・防災に携わる機関、二次的な被害を被る可能性がある国・機関の間で被害を防ぐためのクライシス・コミュニケーションが求められる。このことは、越境火山災害における予防的アプローチの重要性を示している。