日本地球惑星科学連合2019年大会

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[O-01] ブラタモリの探究-「つたわる科学」のつくりかた

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 国際会議室 (2F)

コンビーナ:萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、尾方 隆幸(琉球大学島嶼防災研究センター)、座長:尾方 隆幸

13:45 〜 14:00

[O01-01] ブラタモリに学ぶ─本セッションの趣旨説明

★招待講演

*萬年 一剛1 (1.神奈川県温泉地学研究所)

キーワード:ブラタモリ、テレビ番組、アウトリーチ

現在、NHK総合で土曜日の午後7:30から8:15に放映されている「ブラタモリ」は、タモリと女性アナウンサーが地元の専門家とともに歩き、地域の歴史や成り立ちを解き明かしていく番組である。2008年から東京とその周辺を巡る深夜放送として始まり、2011年に日本地理学会賞を受賞したほか、現在の放映時間になった2015年以降は、国土地理院の「『測量の日』功労者」、日本地質学会表彰、地盤工学貢献賞(地盤工学会)を矢継ぎ早に受賞するなど、地球科学の専門家から高い評価を受けている。

本セッションは、地球科学の専門家も満足できるエンターテイメント番組がどのようにして作られているのか、制作者の意図や工夫、出演者の経験、番組視聴者の分析など、多角的な視点から解き明かし、地球科学のアウトリーチ活動へのヒントを探ろうと企画された。以下では、参考までに私が出演した回の日程と感想を述べる。

私は同番組の「箱根」(2017年4月22日本放映、以下括弧内本放映日)、「箱根関所」(同年5月13日)、「箱根の温泉」(2018年10月6日)の3回に箱根の地質の専門家として出演した。2017年放映分についていうと、協力依頼の電話が初めてあったのは2016年12月末であった。その後、翌年1月中は各所での材料集めに費やされたが、2月中頃にはおおまかなストーリーが決まり、案内人としての出演依頼がされた。3月初めには具体的なセリフが入った「構成」が示されて現地の下見が行われ、中旬に収録が行われた。収録後は、ナレーションのセリフや解説のアニメーションについて適切かどうかの問い合わせが放映の2週間前まであった。

ブラタモリの制作で印象的だったのは、取材期間で様々な材料が検討・取材された上で、放送内容が専門家の意見も踏まえて決まっていく番組製作過程である。また、出演者が楽しみながら地域を回れるよう配慮しているスタッフの努力には感銘を受けた。

昨今、研究者が納税者である市民に向き合い、自分の研究を説明するアウトリーチの機会が増えている。そのような研究者にとって、ブラタモリの製作過程からは、伝えられそうな内容をたくさん集める「取材力」、素材を精選し地域の本質を捉える「洞察力」、伝えるべき内容を載せるストーリーを作る「構成力」、ナレーションやアニメーションを用いた「表現力」、収録現場を明るく楽しくする「現場力」など、必要な「力」とそのあり方を学ぶことができる。

一方、番組でとりあげられる専門的な内容は大幅な簡略化が行われており、専門家としてはどの辺まで許容できるか、呻吟するところとなる。講演では、私の直面した若干の具体例を紹介し、検討を加えたい。