日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-03] 高校生によるポスター発表

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻地質・地球生物学講座岩石鉱物学研究室)、久利 美和(東北大学災害科学国際研究所)、山田 耕(早稲田大学政治経済学術院)

13:45 〜 15:15

[O03-P02] 北アルプス周辺での雲の観測と地表風の解析により明らかになった山岳域での夕立への海風や谷風の重要性

*上条 藍悠1 (1.長野県松本深志高等学校 地学会)

キーワード:夕立、山岳、海風

松本盆地は中部山岳地帯内の盆地で,その西側には北アルプスがある.私は中学生の時,東西方向に延びる積乱雲の列が盆地南部で発生し,夕立をもたらしながら北上していく現象を体験した.その後も,この盆地では夏季,このような現象が時折起こった.また,晴れた日には山脈の尾根線上に対流雲がよく発達している様子も確認できた.高校生になってこの様子をタイムラプスカメラを撮影してみたところ,これらのことには松本盆地周辺の山地により起こされていると思われる熱的循環が関わっているのではないかと思われたため,松本盆地での夕立と地上風の関係を,タイムラプスカメラによる55日間の雲の観測,8年分のAMeDAS風データにクラスタリングを行うことで得た北アルプス周辺風パターンを用いた北アルプス周辺の地表風の解析,実際に山小屋に滞在することによる尾根線上での大気の安定度の日変化の調査,及び個々の事例についてのAMeDASやレーダーデータの解析によって調べた.

この研究で,日の出後,時間が経過するとともに北アルプス周辺では谷風及び海風が発達し,山脈では斜面滑昇流とそれに伴う積雲が発達することが分かった.また,それらの風には,水蒸気を尾根へと運び,尾根での大気の安定度を大きく下げる効果があることが分かった.さらに,尾根線上で発達した積乱雲が尾根での降水と共にもたらす冷気流が,盆地南西部につながる大きな谷を通して集まり,その時間まで吹いていた谷風と収束を起こすことで,その谷と盆地の境界付近で積乱雲の列が発生する場合がある.その雲列も同様に冷気流を吹き出すことにより,谷風の吹いてくる北東で収束を起こし新たな雲列を発生させることで降水域は盆地南西部へ移動し,盆地に出たのちは,海風が吹いてくる方向である北に,降水セルの世代交代を行いながら移動していくことも分かった.

この,積乱雲の列が移動していく現象は松本盆地特有のものではなく,周囲を山に囲まれた盆地において海風が入ってくる条件さえ整えば発生すると考えられる.実際に,ASOSやGOESによるデータでも,雨季のアメリカ合衆国アリゾナ州フェニックス周辺においてこの現象があることを確認できた.

このことから,山岳盆地の夕立の発生において,山脈とそれに伴う谷風,海風は主要な役割を果たしていることが分かった.