13:45 〜 15:15
[O03-P16] 土壌を用いた海水の淡水化
キーワード:水不足、淡水化、土壌のイオン交換能
1.背景・目的
現在水不足は世界各地で問題となっている。特に、人口増加の激しい発展途上国では深刻な問題であり、食糧を生産するための農業用水を確保できない国も多く存在する。現在その対策方法として海水の淡水化が行われているが、巨大なプラントの建設や維持費が大きいことが問題になっており、発展途上国での利用が難しいのが現状である。そこで、海水の淡水化を発展途上国で行うためにイオン交換能をもつ土壌を用いて海水の淡水化の低コスト化を考えた。今回の研究では土壌として、泥炭土と火山灰土である鹿沼土と赤玉土を用いて実験を行った。泥炭土中には陽イオン吸着能をもつ腐植が多く含まれており、火山灰中には陰イオン吸着能を持つアロフェンが多く含まれていることで知られている。
そこで、今回の研究では海水の淡水化をより低コスト化するために陽イオン吸着能を持つ泥炭土と陰イオン吸着能を持つ火山灰土を利用し、海水中からナトリウムイオン、塩化物イオンを除去するためのフィルターを作製することを目的とした。
2.実験1
■方法
今回の実験で使用する試料として泥炭土(北海道江別市石狩川流域から採取)、火山灰土(鹿沼土・赤玉土)を乾燥機で乾燥させ、ミルサーを用いて粉末化した後、ふるいを用いて粒の大きさをそろえたものを試料とした。その後、泥炭土7g、鹿沼土7g、赤玉土10gをそれぞれ単体の場合と、泥炭土+鹿沼土、泥炭土+赤玉土の条件に分けてフィルターを作成し、そこに擬似海水として海水と同程度の塩分濃度であるNaClaq(3%)を25ml通水し、通水後の溶液のナトリウムイオン濃度を、ナトリウムイオン濃度計(HORIBA・LAQUAtwin-Na-11)、塩化物イオン濃度をイオンクロマトグラフ(島津製作所 prominence )を用いて測定した。
■結果
それぞれのフィルターに通水をした結果、泥炭土単体で作成したフィルターは通水を行うことができなかった。それに対し、鹿沼土、赤玉土単体で作成したフィルターは通水を行うことができ、ナトリウムイオンと塩化物イオンどちらも吸着することができた。また、混合して作成したフィルターは単体時よりも多くのナトリウムイオンを吸着することができた。
■考察
泥炭土単体で通水を行うことが出来なかったのは、泥炭土が一度乾燥したことによって撥水性をもったことが原因だと考えられる。また、火山灰土が単体でも陽イオンを吸着したのは、火山灰土中に含まれるアロフェンの表面に存在するフェノール水酸基の変異荷電によるものであると考えられる。泥炭土と各種火山灰土を混合し通水したときに、ナトリウムイオンの除去率がどちらも上昇していたことから、泥炭土を混合することによって相乗の効果が得られると考えられる。
3.実験2
実験1の結果より、除去率が良かった泥炭土と各種火山灰土の混合フィルターに関して、実験1の通水後の溶液をもう一度新品のフィルターに通水し、通水後の溶液を同様に測定した。
■結果
二回目の通水を行った結果、泥炭土+鹿沼土、泥炭土+赤玉土どちらのフィルターにおいてもナトリウムイオンと塩化物イオンを除去することができた。また、どちらのフィルターにおいても一回目の通水時より二回目の通水時のほうが塩化物イオンの除去率が高かった。
■考察
通水2回目を行っても、ほぼ同様な割合で濃度が減少したことから、通水3回目を行っても同様に濃度が減少するのではないかと考えられる。また、一回目の通水時より二回目の通水時のほうが塩化物イオンの除去率が高かったことから、一回目の通水時に溶液中に水素イオンが溶け出し、それによって火山灰土に含まれるアロフェンの変位荷電の反応が起こりやすくなったと考えられる。
4.結論
擬似海水中のナトリウムイオン、塩化物イオンを泥炭土と火山灰土を用いて除去でき、また、二回目の通水を行っても濃度がさらに減少したことから、淡水化フィルターとしての有用性を見出すことができた。
5.参考文献
1、編集: 石渡良志,米林甲陽,宮島徹 監修,”日本腐植物質学会 2008年 環境中の腐植物質-その特徴と研究法“ 三共出版
2、浅岡 聡,青野 求, 2005年“赤玉土および各種無機金属系吸着剤混合赤玉土による海水の脱塩”,名城大学農学部生物環境科学科環境分析化学研究室
現在水不足は世界各地で問題となっている。特に、人口増加の激しい発展途上国では深刻な問題であり、食糧を生産するための農業用水を確保できない国も多く存在する。現在その対策方法として海水の淡水化が行われているが、巨大なプラントの建設や維持費が大きいことが問題になっており、発展途上国での利用が難しいのが現状である。そこで、海水の淡水化を発展途上国で行うためにイオン交換能をもつ土壌を用いて海水の淡水化の低コスト化を考えた。今回の研究では土壌として、泥炭土と火山灰土である鹿沼土と赤玉土を用いて実験を行った。泥炭土中には陽イオン吸着能をもつ腐植が多く含まれており、火山灰中には陰イオン吸着能を持つアロフェンが多く含まれていることで知られている。
そこで、今回の研究では海水の淡水化をより低コスト化するために陽イオン吸着能を持つ泥炭土と陰イオン吸着能を持つ火山灰土を利用し、海水中からナトリウムイオン、塩化物イオンを除去するためのフィルターを作製することを目的とした。
2.実験1
■方法
今回の実験で使用する試料として泥炭土(北海道江別市石狩川流域から採取)、火山灰土(鹿沼土・赤玉土)を乾燥機で乾燥させ、ミルサーを用いて粉末化した後、ふるいを用いて粒の大きさをそろえたものを試料とした。その後、泥炭土7g、鹿沼土7g、赤玉土10gをそれぞれ単体の場合と、泥炭土+鹿沼土、泥炭土+赤玉土の条件に分けてフィルターを作成し、そこに擬似海水として海水と同程度の塩分濃度であるNaClaq(3%)を25ml通水し、通水後の溶液のナトリウムイオン濃度を、ナトリウムイオン濃度計(HORIBA・LAQUAtwin-Na-11)、塩化物イオン濃度をイオンクロマトグラフ(島津製作所 prominence )を用いて測定した。
■結果
それぞれのフィルターに通水をした結果、泥炭土単体で作成したフィルターは通水を行うことができなかった。それに対し、鹿沼土、赤玉土単体で作成したフィルターは通水を行うことができ、ナトリウムイオンと塩化物イオンどちらも吸着することができた。また、混合して作成したフィルターは単体時よりも多くのナトリウムイオンを吸着することができた。
■考察
泥炭土単体で通水を行うことが出来なかったのは、泥炭土が一度乾燥したことによって撥水性をもったことが原因だと考えられる。また、火山灰土が単体でも陽イオンを吸着したのは、火山灰土中に含まれるアロフェンの表面に存在するフェノール水酸基の変異荷電によるものであると考えられる。泥炭土と各種火山灰土を混合し通水したときに、ナトリウムイオンの除去率がどちらも上昇していたことから、泥炭土を混合することによって相乗の効果が得られると考えられる。
3.実験2
実験1の結果より、除去率が良かった泥炭土と各種火山灰土の混合フィルターに関して、実験1の通水後の溶液をもう一度新品のフィルターに通水し、通水後の溶液を同様に測定した。
■結果
二回目の通水を行った結果、泥炭土+鹿沼土、泥炭土+赤玉土どちらのフィルターにおいてもナトリウムイオンと塩化物イオンを除去することができた。また、どちらのフィルターにおいても一回目の通水時より二回目の通水時のほうが塩化物イオンの除去率が高かった。
■考察
通水2回目を行っても、ほぼ同様な割合で濃度が減少したことから、通水3回目を行っても同様に濃度が減少するのではないかと考えられる。また、一回目の通水時より二回目の通水時のほうが塩化物イオンの除去率が高かったことから、一回目の通水時に溶液中に水素イオンが溶け出し、それによって火山灰土に含まれるアロフェンの変位荷電の反応が起こりやすくなったと考えられる。
4.結論
擬似海水中のナトリウムイオン、塩化物イオンを泥炭土と火山灰土を用いて除去でき、また、二回目の通水を行っても濃度がさらに減少したことから、淡水化フィルターとしての有用性を見出すことができた。
5.参考文献
1、編集: 石渡良志,米林甲陽,宮島徹 監修,”日本腐植物質学会 2008年 環境中の腐植物質-その特徴と研究法“ 三共出版
2、浅岡 聡,青野 求, 2005年“赤玉土および各種無機金属系吸着剤混合赤玉土による海水の脱塩”,名城大学農学部生物環境科学科環境分析化学研究室