日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-03] 高校生によるポスター発表

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻地質・地球生物学講座岩石鉱物学研究室)、久利 美和(東北大学災害科学国際研究所)、山田 耕(早稲田大学政治経済学術院)

13:45 〜 15:15

[O03-P17] 火山灰土、使えない土からバイバイ!~火山灰土中のアルミニウム除去による農業的有効利用の検討~

*三木 悠登1 (1.東京都立多摩科学技術高等学校)

キーワード:土壌改良、火山灰、アロフェン

1.背景

火山灰土は世界の地表の1%にも満たない非常に稀な土壌であり、特殊な土壌として認識されている。しかし日本では火山灰土は国土の25%を占めており豊富に存在する。火山灰土は軽く、保水性があり一見扱いやすい土であるが一概にそうとは言えない。火山灰土は鉄とアルミニウムが主成分であり、養分が少ない、酸性に傾きやすい、微生物が少ないという特徴がある。アルミニウムは酸性で溶解し肥料のリンと結合する。リン酸アルミニウムは栄養にならない上に、アルミニウムは植物の根等に損傷を与える。これらの問題を改善するために本研究では火山灰からアルミニウムをとりだすことに注目した。上記でも述べた通り火山灰は扱いやすい上に多量に存在する土である反面、世界的な絶対数が少ないことから研究される機会も少なく、肥料の過剰施用などの一時的な対策により回復の兆しが見えない火山灰土も増えている。これらの問題を解決すれば食料自給率の改善や経済基盤の安定などの日本に利益を与えると考えた。



2.研究目的

(1)火山灰による植物生育

 火山灰だけで植物を育て,植物の栄養欠乏症状を調べることで植物的視点による栄養の欠乏を調べる。

(2)土壌の基礎調査

 火山灰(桜島・三宅島)と火山灰土(鹿沼土)の組成の調査として,pH測定,定性と定量を行う。

(3)アルミニウムの溶出実験

土壌中のAlのpHに対する溶解度関係の調査としてAlの定性と定量を行った。



3.研究方法

(1)火山灰による植物生育

火山灰(桜島・三宅島)、火山灰土にそれぞれ小松菜と二十日大根を植えた。人工気象気を用いて、温度は25℃設定にし、純水 20mlを与えた。

(2)Ⅰ.土壌のpH測定

火山灰(三宅島・桜島)、火山灰土 20gと純水 50ml

を振とうビンに入れ、振とうを30分間行った。

Ⅱ.土壌中元素の定性と定量

火山灰(三宅島・桜島)、火山灰土 20gと純水 50mlを浸透ビンにいれ、振とうを30分間行った。その後、蛍光X線分析装置(EDX)によって定性定量を行った。

(3)アルミニウム溶出実験

Alを溶出させる溶媒として、pH5.8,pH4.3,1mol/Lの塩酸 100mlと火山灰(三宅島・桜島)、火山灰土それぞれ50gを250rpmで振とうを24時間行った。それらをパックテストと蛍光X線分析装置(EDX)により定性と定量を行った。



4.研究結果

(1)火山灰による植物生育

 二週間以内に全て枯れ、症状として葉が小さい、葉が黄色い、赤色に染まる、茎が弱いなどの症状が出た。

(2)Ⅰ.pHの測定

全体としてpHが下げられたことが確認できた。

火山灰・桜島では4.8、火山灰・三宅島では4.0、火山灰土では6.63である。

Ⅱ. 土壌の定性、定量の結果

Si,Fe,Al,Ca,K,Sなどの定性ができた。特に、Si、Fe、Alが多く定量された。

(3)アルミニウム溶出実験

①パックテストによる定性・定量

5.8 塩酸   + 火山灰土 0.1ppm

4.3 塩酸   + 火山灰土  0.2ppm

1mol/L 塩酸 + 火山灰土 1ppm以上



②EDXによる定性・定量

5.8 塩酸   + 火山灰土 1%

4.3 塩酸   + 火山灰土  5%

1mol/L 塩酸 + 火山灰土 94%



4.考察

(1)結果で挙げた症状はすべて、P,N,Kから来る欠乏症状であり、三大要素が全て足りていないと考えられる。

(2) 火山灰土はアロフェンに構成されておりCECが高く、肥料がないので塩基飽和度が低かった為pHが低いと考えられる。また、火山灰は斑状組織でSi,Fe,Al,Sなどが存在する為、構成元素が定性できたと考察できる。また、火山灰土はアロフェン(SiO2・Al2O3・nH2O)で構成されるため構成元素が多く定量できたと考えられる。

(3)金属個体のAlと同様にアロフェン中のAlにおいてもpHが低いと溶けだしやすいという相関関係が確認できたと考えられる。また、作成した溶液においてpHが全て5.5付近に集中したことから火山灰土の緩衝性の強さが伺えた。



5.参考文献

・R.L.Parfitt,1984, Estimation of allophane and halloysite in three sequences of volcanic soils

・農林水産省,土壌分析法

・土壌中における重金属の動態

・土壌-河川-湖沼系におけるアルミニウムの動態と化学