日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[O-04] 社会とJpGUとの相互交流によって創る新しい地球惑星科学教育

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 106 (1F)

コンビーナ:藤原 靖(神奈川県立向の岡工業高等学校 定時制・総合学科)、秋本 弘章(獨協大学経済学部)、座長:藤原 靖(神奈川県立向の岡工業高等学校 定時制・総合学科)、秋本 弘章(獨協大学)

14:45 〜 15:00

[O04-04] 赤色立体地図による地形の可視化と地学教育

★招待講演

*千葉 達朗1 (1.アジア航測株式会社)

キーワード:赤色立体地図、ハザードマップ、地学教育

1.はじめに
 地学教育において地形の3次元的な理解は基礎的で重要なことであるが、等高線の読図が大きな課題となってきた。等高線は地形の表現法として、地形面と平面の交線の平面位置を示したもので、高度を等間隔で変化させることで、ある種の縞模様として可視化される。原理的に、水平面と垂直面は可視化することはできないが、作成者の個人の技量によることなく、客観的に地形の表現が可能である。断面図やメッシュデータも変換作成することが可能で、すばらしい発明である。国土地理院の2万5千分の1地形図などを読みこなすにはこのスキルが欠かせない。
2.数値地形データと既往地形表現の限界
 地形のデジタル化は1980年代以降徐々に高度化してきた。国土数値情報250mにはじまり、50m、10m、5mと精度は年を追うごとによくなってきた。一方で、このデータを可視化するための技術は、データ密度の低い頃のままで、変化はなく、せっかくの詳細なデータが表現しきれないという問題も生じてきた。陰影図や斜度図、高度段彩図などでは、すべてのデータを読み取ることは困難であった。陰影図は方向依存性が圧という短所があり、光源方向により凹凸が反転したり、段差と溝の区別がつかないなどの問題があった。方向依存性のない斜度には、尾根谷の区別がつかないという短所があった。
3.赤色立体地図の原理と先進性
千葉は、2002年の富士山の青木ヶ原樹海の地形調査をきっかけとして、赤色立体地図を発明した。これは航空レーザ計測による1mメッシュの詳細なデータを、しかも凹凸が複雑に分布する溶岩表面の複雑な地形を、余すことなくしかも大地形も捉えられる状態で可視化するというものであった。急斜面ほどより赤く、尾根ほど明るく、谷ほど暗くという表現は、特別な訓練や教育を受けない、一般の人でも、直ちに理解できるという特徴をもっていた。また、この図を従来の等高線図と重ねたり、高度段彩と重ねることも可能で、地形の理解が大幅に進むきっかけとなった。ブラタモリなどのメディアで利用されることも多く、最近では地質図NAVIや地理院地図でも背景の一つとして選択可能となっている。
4.JPGUと赤色立体地図
 アジア航測では、赤色立体地図のよさを発信するための場として、JPGUの展示が非常によい機会であると捉え、毎年ブース展示を行ってきた。ここではじめて、赤色立体地図を目にすることが、地形や地質に興味を持つきっかけともなったという高校生もいる。また、ここでの展示が海底地形に適用できるというアイディアをもとに、JAMSTECとの一連の仕事にもつながり、その海底地形図がさらなる地学教育効果をもたらしている。
 また、毎年繰り返している、赤色立体地図の地形模型上でシャンプー溶岩を流すというアナログモデル実験は、ハザードマップの理解にとって非常に効果的であった。今後もJPGUの活動を通じて地学教育のためにできることを模索してゆきたい。