日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-04] 社会とJpGUとの相互交流によって創る新しい地球惑星科学教育

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 106 (1F)

コンビーナ:藤原 靖(神奈川県立向の岡工業高等学校 定時制・総合学科)、秋本 弘章(獨協大学経済学部)、座長:藤原 靖(神奈川県立向の岡工業高等学校 定時制・総合学科)、秋本 弘章(獨協大学)

16:00 〜 16:15

[O04-07] 現役学生が考える現在の地球惑星科学教育

★招待講演

*大塚 英人1 (1.国立大学法人信州大学理学部理学科地球学コース)

キーワード:地球惑星科学教育

小中学校の地学・地理教育は、実物に触れながら学ぶ機会をもっと設けるべきだと考える。学習指導要領も、学校における実践的で深い学び、いわゆる"アクティブラーニング"を求めているが、現実ではコマ数なども考えると、なかなか容易ではない。とりわけ、小学生のうちは比較的実物に触れる授業は多いが、中高では十分な時間が取れず教科書的な説明に留まることも多い。私は、実物を用いた教育、生徒の学習目的の理解、深い学びに応えられる教員の見識が必要だと考える。
 まず、地球惑星科学は、理科だけでなく様々な知見も総合的に用いて考える分野である。このことは、生徒が興味を持つということに関しては大きな強みだといえる。生徒は、実物を見てそこから考え、議論することは得意であるが、概念的な分野に至ると難しく感じ、興味を失うことも少なくない。また、どうしても地学・地理は暗記科目という側面を避けては通れない。記号や年代など、基本的に備えなければいけない知識量が多い。これらの知識を得た上で学ぶことで面白さを感じ、興味を持つことができるだろう。少ない授業数を工夫しなければ全てをこなすことは簡単ではないだろう。さらには、地学以外の授業の知識も応用することがあるため、そこに穴があってもつまずいてしまう。私は、元々地学に興味があったことで、地球惑星科学を専攻するに至った。しかし、多くの生徒に興味を持ってもらうには、実物を用い理解するのに容易な環境を用意することが必要不可欠だろう。
 また、生徒が興味を持つには、学習目的を理解することが必要だ。とりわけ学ぶ意味の理解や知識の習得において、校外に出ることが必要だと考える。その土地や地形の成り立ちを学ぶことは地学・地理の基本であるが、校外は教材の宝庫である。急傾斜地崩壊危険区域の看板などがあれば、地学・地理の学習が防災につながることも理解できるだろう。生徒も、教室の授業よりも屋外の授業に好意的だ。より興味も感じ、自ら深い学びを実践する生徒もいるだろう。生活の上で必要な学問であることを理解することで、より積極的に学ぶだろう。
 そして、自ら深い学びを実践する生徒に対し教員が補助してあげられる能力を持つことも重要である。小さな疑問でも答えられることや、生徒が理解するための道しるべを用意してあげることが教員に必要なスキルである。少し興味を持った生徒でも、教員が対応できなければ失してしまうかもしれない。生徒が興味を持ち、それを伸ばすためには相応の教員の能力が求められる。
 これらのことから、これからの地球惑星科学教育は、より分かりやすく実践的にすべきであると考える。何より重要なのは、教員の個々の能力の向上である。地学・地理の全分野の専門家になるのは難しいだろうが、少しでも幅広い知識を深めていくことが重要だろう。最先端の研究や常識を教えることも生徒の興味を引くきっかけには良い。真新しい知見は、科学の最も面白いところの一つだと考えるからだ。今後、教科書にとどまらない実践的で発展的な地球惑星科学教育が普及することに期待したい。