日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-06] 激甚化する風水害にどう対応するか

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 103 (1F)

コンビーナ:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学専攻)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、和田 章(東京工業大学)、座長:松本 淳(首都大学東京)

14:15 〜 14:30

[O06-03] 水害に関連する地形条件の把握とハザードマップ

★招待講演

*熊木 洋太1 (1.専修大学文学部)

キーワード:災害リスク、土石流、地形変化、地形学図

人々が自然災害の危険性の高い場所はどこかを知っていることが大切である。地形条件の中には,水害・土砂災害と密接な関係のあるものがあり,災害の危険性を把握することに役立つ。例えば,くり返し土石流が流下したところは,土石流物質が堆積して形成される特有の地形(沖積錐,土石流扇状地などと呼ばれる)が形成され,この地形の場所は,将来再び土石流が流下する可能性が高いと判断することができる。また,下流に狭窄部があったり,より大きな川の堆積地形や海岸の堆積地形によって閉塞状態となったりしている河川沿いは,水害の被害が大きくなりやすい。落堀(おっぽり),クレバススプレーといった過去の破堤を示す地形が認められることもある。水害は多少なりとも地形を変化させるが,この変化の積み重ねで現在の地形が形成されてきたことから,上記のような地形を手がかりに,その地域でどのような地形形成作用が働いて現在の地形が形成されてきたかを知ることは,その場所でどのような水害が発生してきたか,今後水害が発生する場であるのかどうか,ということを知ることにほかならない。地形の状態を知るには,地形図,数値標高データ(DEM),空中写真などを使うのが効果的で,安価に,しかも面的にすき間なく調査できる点で効果的である。
このようなことから,地形条件は,ハザードマップ作成の基礎的な情報となっている。水害のハザードマップでは,これに加え,高度なシミュレーションを行っている場合も多い。しかし,シミュレーションは,どういう想定をするかで結果は変わり得る。また,どこが危険でどこが安全かを明確に示そうとすると,大胆な割り切り(単純化)が必要となる。そういうことを踏まえると,住民はハザードマップに示された危険度判定の結果だけでなく,地形条件をはじめとしてその地域の災害特性を理解し,いざというときに主体的に判断できることが望ましい。日本では,大きな平野ではいくつかの種類の地形分類図が作成されており,活用できる。