日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-06] 激甚化する風水害にどう対応するか

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 103 (1F)

コンビーナ:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学専攻)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、和田 章(東京工業大学)、座長:松本 淳(首都大学東京)

15:00 〜 15:15

[O06-06] 避難情報の時間・空間解像度と避難行動に関する考察

★招待講演

*畑山 満則1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:災害情報、避難行動

1.はじめに

平成29年九州北部豪雨、平成30年7月豪雨など近年、気候変動の影響で、過去に経験したことのない豪雨や台風が日本を襲い、各地に大きな爪痕を残している。これら過去に経験したことのない自然現象においては、まず命を守る行動、つまり適切な避難が求められる。避難のきっかけとなる避難情報は、重要であるが場合によっては、行政の指示待ち体質を作ることになるため、いつどのように発表し、どのように活用するのかについて様々な議論がなされてきた。平成25年台風26号に伴う豪雨により発生した伊豆大島土砂災害では、避難勧告が発令されなかったことが、平成26年8月豪雨災害に伴う広島土砂災害では、避難情報の遅れが問題視された。これらの課題を受けて、平成29年には「避難勧告等に関するガイドライン」が改正されたが、これらの情報が避難行動につなげられているかについては未だ議論の余地を残している。本稿ではこれらの課題について考察する。

2.避難情報と期待される行動

「避難勧告等に関するガイドライン」では、避難準備・高齢者避難開始、避難勧告、避難指示(緊急)といった避難情報の発令について、受け取る立場にたち、地域の実情に応じた基準を作成することを推奨している。避難行動には、災害の危険性が高まったときにいる場所に応じて、指定緊急避難所に移動する立ち退き避難だけでなく、「近隣の安全な場所」への立ち退き避難、建物内でより安全な部屋に移動する屋内安全確保が期待されている。

3.時間解像度に関する考察

 豪雨による洪水や土砂災害においては、降雨量の時間予測を連動して避難情報を発表することとなる。近年では、災害の発生が深夜と予測されることも多いが、深夜に災害情報を発表しても、避難行動につなげられない場合が多い。これを考慮して、避難行動がとれる時間帯から避難することが進められているが、危機感がない中での避難情報では避難行動につながらない場合が多い。

4.空間解像度に関する考察

 避難情報は、一般的に各戸に対してではなく、一定の領域に対して発表される。この空間解像度は、統一な基準があるわけではなく、各自治体によりまちまちである。領域が大きいと、領域内でリスクの高いところと低いところが混在しているところが多く、避難行動をとる必要がないと判断してしまう住民も多い。しかし、災害対応に十分な人員を割けない自治体では、領域をさらに絞り込むことは難しく、各戸に対して避難すべきか否かを判断することは難しい。

5.おわりに

 避難情報は、その時間解像度や空間解像度も併せて知っておかないと避難行動の判断にはなりえない。これらの情報を正しく受け取り適切な行動を起こすためには、住民側の意識啓発が伴う必要がある。これを実現するためには、行政だけでなく、地域や家庭での取り決めを作り対応することが求められる。