日本地球惑星科学連合2019年大会

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[J] ポスター発表

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[O-06] 激甚化する風水害にどう対応するか

2019年5月26日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学専攻)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、和田 章(東京工業大学)

[O06-P02] 西日本豪雨災害における避難行動および復興感の影響要因の検討

*大友 章司1木村 玲欧2 (1.甲南女子大学、2.兵庫県立大学)

キーワード:平成30年7月豪雨、復興感、避難行動

2018年の6月28日から7月8日の集中豪雨により、甚大な人的・物的被害をもたらした西日本豪雨災害(平成30年7月豪雨)が生じた。このような甚大な自然災害において、当時の避難行動やその後の復興プロセスを検討することは、被災地支援や今後の自然災害への防災として重要である。これまでにも、災害に対する知識が自然災害当時の避難行動やその後の災害に対する認識に影響を及ぼすことが示唆されている(e.g. Kimura et al., 2017)。そこで、本研究では、西日本豪雨災害の被災地域の人々の災害への知識といった特徴が、避難行動やその後のリスク認知や復興感に及ぼす影響について検討を加える。

2019年1月下旬から2月上旬にかけて、西日本豪雨災害で大きな被害を受けた広島県の13地区と岡山県の6地区の住民を対象に、合計1000名にweb調査を行った。調査フレームを図1aに示す。調査項目は、災害に関わる個人属性、被害状況、災害リスクの認識、復興カレンダーなどで構成されている。とくに、本研究では、豪雨災害に対する予期、避難行動、リスク認知、復興感の関連について分析を加えた。その主な結果は次の4つに集約できる。1つは、水害に対する予期と避難行動との関連(図1b)についてベイズ推定により分析したところ、水害に対する予期のレベルより、当時の避難行動に違いがあることが確認された(b=.13, 95%CI=.01~.25)。具体的には、水害による被害が生じないと思っていた人ほど、避難しない傾向がみられた。2つは、ハザードマップに対する知識と避難行動の関連(図1c)をベイズ推定により分析したところ、ハザードマップの知識レベルにより、当時の避難行動に違いがあることが確認された(b=.30, 95%CI=.19~.42)。具体的には、ハザードマップへの認識が少ない人ほど、避難しない傾向が示唆された。3つは、西日本豪雨災害の被害のレベルによるその後のリスク認知の違いについて比較を行った(図1d)。ベイズ推定の結果、水害の重篤性の認知において、被害を受けなかった人と床上浸水の被害を受けた人の間で差がみられた(b=-.62, 95%CI=-.92~-.32)。具体的には、被害を受けなかった人よりも、床上浸水の被害を受けた人の方が、豪雨が起きれば大きな被害が生じるだろうと認識をしていた。最後に、西日本豪雨災害の被害のレベルと復興感の違いについても比較を行った(図1e)。ベイズ推定の結果、復興感の認識において、被害を受けなかった人と床上浸水の被害を受けた人の間で差がみられた(b=2.70, 95%CI=1.53~4.38)。具体的には、被害を受けなかった人よりも、床上被害を受けた人の方が復興したと感じる傾向が低かった。

以上のように、西日本豪雨災害以前からの災害に対する認識の違いが、当時の避難行動を左右していたことが示唆された。災害に対する十分な知識がないと、避難行動には結びつかないといえる。また、被害の経験により、その後のリスク認知や復興感に違いが生じていることが示唆された。災害を経験したことより、災害に対する問題意識に変化が生じたといえる。したがって、豪雨災害への一般の人々の対応能力を高めるためには、災害時の経験の反映に加え、ハザードマップなど災害に対する事前の知識の普及が重要であるといえる。