日本地球惑星科学連合2019年大会

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[J] ポスター発表

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[O-08] ジオパークで地球活動をイメージする -ジオ多様性の大切さを知ろう-

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、市橋 弥生(佐渡ジオパーク推進協議会)、小原 北士(Mine秋吉台ジオパーク推進協議会)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会事務局)

[O08-P04] ジオサイト清掃活動から地球環境問題へ

*石川 智1小池 拓矢1 (1.下北ジオパーク推進協議会)

キーワード:下北ジオパーク、清掃活動、地球環境問題

津軽海峡(日本海)と太平洋、内湾である陸奥湾に囲まれた下北地域は、海によって形作られるとともに海の恵みを受け取ってきた。日本海と他の海をつなぐ数少ない海峡の一つである津軽海峡には、対馬列島から流れてきた津軽暖流と、北海道から分岐した沿岸親潮が噴火湾周辺を経て入り込む。さらに東北地方の太平洋沿岸までやってくる黒潮の影響も見られる。これらの海流が津軽海峡で交錯することで豊かな漁場が形成され、年始の風物詩となった大間のマグロを始めとする様々な魚介が漁獲されている。
一方で海流は海を漂流する様々なものを海岸へ打ち上げる。下北地域の西海岸に位置する仏ヶ浦は、和語のホトケとアイヌ語のウダ(浜・浦)が合わさった地名が元であるが、“仏様が打ち上がる場所”という側面もある。津軽海峡に面した東通村の石持漁港周辺には、南洋に生息しているはずのアオイガイが対馬暖流に乗ってきて漂着するのが冬の風物詩となっている。2018年2月には陸奥湾東側の沿岸に大量のイワシが打ち上がるというできごともあった。同時に海洋を漂うゴミも大量に打ち上げられていることが各地で問題となっている。
打ち上がるゴミの問題に対し、各地の漁業者や地域住民によって海岸美化や海岸植生の保全を目的に清掃活動が行われている。下北ジオパーク推進協議会としても下北各地の海岸清掃に賛同し、広報活動やタイアップ企画の開催で協力している。特に一昨年度からは、ゴミの起源となる情報をまとめたり、漂着物で創作したアート作品やシーグラスの展示を行ったりした。参加者の中には漂着ゴミの問題から海洋ゴミ・マイクロプラスチックに着目した方もいた。その方を中心に清掃参加者の中で問題意識の共有が進み、マイクロプラスチックに関する世界の取組状況について国立研究開発法人海洋研究開発機構むつ研究所の上席研究員に講演を依頼するまでに機運が醸成された。
“海と生きる「まさかり」の大地”というテーマの下、推進している下北ジオパークにおいても海洋環境問題にも取り組むことが望ましい。ジオサイト・海岸の清掃活動から視野を広げたこの取り組みはまさに“Think Globally, Act Locally”であり、SDGsの「海の豊かさを守ろう」にも通じる。「ジオ」といえば大地(地圏)のことを想起しがちであるが、海洋(水圏)についても取り組むことは、豊かな恵みを享受している下北ジオパークにおいては必要である。