日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-AE 天文学・太陽系外天体

[P-AE20] 系外惑星

2019年5月26日(日) 10:45 〜 12:15 105 (1F)

コンビーナ:生駒 大洋(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、成田 憲保(東京大学)、座長:生駒 大洋(東京大学)、成田 憲保(東京大学)

11:15 〜 11:30

[PAE20-09] 中心星近傍岩石スーパーアースの放射スペクトル推定:大気散逸によるアルカリ金属の枯渇

*伊藤 祐一1,2生駒 大洋2 (1.北海道大学 大学院 理学研究院 地球惑星科学部門 宇宙惑星科学分野、2.東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)

キーワード:系外惑星、大気、地球型惑星

現在、2地球半径以下の惑星半径を持つ系外惑星は1000個以上発見されている。それらの約半数は、岩石の融点温度を超えた放射平衡温度を持つほど中心星近傍(0.1AU以下)に存在している。それらがCoRoT-7 bに代表されるような岩石惑星であるなら、中心星近傍の岩石惑星はマグマ由来の岩石蒸気(NaやO, Si, Mg, SiOなど)で構成されたミネラル大気と呼ばれる大気を持つと考えられている(Schaefer & Fegley 2009)。さらに、岩石中でNaやKは高い揮発性を持つ一方で低い存在量であるために、大気散逸のような大気の損失過程は、ミネラル大気そしてマグマからNaとKの選択的な枯渇を引き起こすと考えられる。また、紫外線が照射されたミネラル大気を想定した1次元流体モデル(Ito & Ikoma, in prep)から、主星が若い頃に起こる大気の流体力学的散逸によって、NaやKが全て失われてしまう可能性が示唆されている。従って、ミネラル大気の観測的検出はその惑星が岩石惑星である確定的証拠を与える。さらには、その大気成分の特定、特にNaやKの有無は、マグマ組成を制約するだけでなく、惑星の内部や進化を知る手がかりとなりうる。
本研究では、スーパーアースサイズの中心星近傍岩石惑星の持つミネラル大気の温度構造及び放射スペクトルについて、マグマ中のNaやKの枯渇がどのような影響を与えるかを調べる。その際、マグマと大気間の化学平衡である気体組成、鉛直温度構造、二次食スペクトルを計算する静水圧平衡・放射平衡・化学平衡を仮定した大気モデル(Ito et al. 2015)を用いた。本発表では、CoRoT-7 bやKepler-10bのような高い放射平衡温度を持つ場合の結果を示す。NaとKを含まない場合の大気構造は、NaとKを含む場合(Ito et al., 2015)と同様に温度逆転層を持った。ただし、NaとKがない場合の方が、より高温であった。これは、NaやKがないために、特に可視光の波長での放射率が弱くなったためである。この高温化に伴い、平衡温度が3000Kの場合には、NaやK由来の可視光の放射がなくなるだけでなく、SiOによる放射特徴がNaとKを含む場合と比べ上昇した。最後に、このNaとKの有無に伴う二次食スペクトルの違いは、将来計画されている宇宙望遠鏡で検出可能であることを示す。