日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-AE 天文学・太陽系外天体

[P-AE20] 系外惑星

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:生駒 大洋(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、成田 憲保(東京大学)

[PAE20-P01] 巨大惑星形成モデルによる系外惑星の質量・軌道半径分布の解釈

*村瀬 清華1田中 秀和1 (1.東北大学)

キーワード:系外惑星、巨大惑星、原始惑星系円盤

約4千個の系外惑星が発見され、それらの質量や軌道の分布などの統計的性質が明らかになっている。しかし、惑星質量や軌道半径の分布が原始惑星系円盤においてどのようにしてつくられたかについては未だ説明されていない。本研究では、固体核の円盤ガス捕獲により巨大惑星が形成されたとするコアアクリーションモデルを採用する。これを観測された系外惑星に対し適用することで、系外惑星の質量・軌道半径の分布は説明可能かどうか、また可能な場合にはどのような原始惑星系円盤において可能となるのかを明らかにする。
本研究で採用する巨大惑星形成の理論モデルは以下のようなものである。円盤ガス捕獲による巨大惑星成長率についてはTanigawa & Tanaka (2016)のモデルを用いる。惑星軌道落下についてはKanagawa et al.(2018)の最新モデルを用いる。これらの理論モデルは複数の数値流体計算の結果をよく再現しており信頼性は高い。一方、本研究では簡単のため複数惑星の間の相互作用は無視した。惑星の成長率や移動速度は惑星近傍の円盤ガス面密度に比例するので、原始惑星系円盤全体の時間進化モデルも必要である。本研究では単純な粘性降着円盤の自己相似解を採用した。さらに、惑星のガス捕獲による円盤面密度低下を考慮して自己相似解を修正した。円盤の散逸機構として光蒸発による円盤ガス消失も考慮した。このガス消失率はパラメータとした。
このような巨大惑星形成モデルから軌道半径-質量平面における惑星進化曲線を得た(図1)。この進化曲線は解析的な式で書くことができる。惑星質量と軌道半径の変化率はどちらも円盤面密度に比例することから、この進化曲線は原始惑星系円盤モデルの詳細には依存しない。図には各系外惑星のデータもプロットした。系外巨大惑星は2木星質量程度(中心星質量の1/500程度)のものが多いが、この質量の惑星を形成する際に軌道落下はほとんど起こらないことが進化曲線からわかる。中心星質量の1/50という最大の系外惑星においても軌道半径が1/10になる程度の軌道落下で済むことがわかった。また、系外巨大惑星の軌道半径は約2AUのものが多いが、これは円盤のスノーライン(~3AU)で固体コアがつくられやすいことで説明できる。
惑星の成長が進化曲線のどこで停止するかについては、主に円盤初期質量と、円盤消失を左右する光蒸発による円盤消失率の2つの量で決まる。よって、光蒸発による円盤消失率を与えれば、各系外惑星の質量に対してそれを生み出す円盤初期質量がそれぞれ決まる。このようにして、系外惑星の質量分布から本研究の理論モデルによって円盤初期質量分布を得た(図2)。図には比較のためにへびつかい座分子雲で得られた原始惑星系円盤の質量分布(Andrews et al. 2010)も示した。理論モデルから得られた円盤質量分布と観測から得られた分布とでピークを合わせるためには、光蒸発による円盤消失率は 3x10-9太陽質量/年程度が適当であることがわかった。